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5月7日 問題のシーン
辺りはもう暗い。路地裏の妙に開けた場所で、俺は只々突っ立っていた。目の前には、人間の死体が転がっていた。外傷は無い。でも、死んでいると分かる程に動かない。
だけど、俺はそれをもう見てはいなかった。
目の前に立っている一人の少女|(顔は何かに覆われていて見えない)、その手に握られた___一振りの刀。それは、とても美しかった。
少女がこっちに近付いてくる。俺は動かない。少女が俺の目の前で立ち止まり、刀を振り上げる。俺は動かない。そして、少女は刀を振り下げる。俺は地面に倒れこむ。痛みは無い。意識がじわじわ無くなっていき、完全に消え失せる。
私の目の前で彼が倒れる。恐怖も驚愕も全て吹き飛び、ビルの影から飛び出して彼の所に駆け寄る。彼を抱きしめて少女に向かって叫ぶ。ふざけんな、とか彼を返せ、とかそんな感じの事だったと思う。私は彼に生き返って欲しかった。その気持ちはどんどん強くなっていく。その最中、意識がぷつんと切れる。