3.AIの進歩
人工知能(Artificial Intelligence、通称AI。以下“AI”として表記)という言葉を聞いて、思い描くイメージは人それぞれでしょう。ですが、今を生きる世代の人びとの大半にとって、AIなどというものはある種SFの産物、すこし現実離れしたシロモノとしてのみ受け入れられるものなのではないかと思います。
しかしながら、ここ数年の内にAIは飛躍的な進歩をとげ、私たちの日常生活にまで浸透しつつあります。
AIの進歩を支えているのは、「ディープラーニング(深層学習)」という技術の確立にあります。この技術の確立により、あらかじめ人間がデータやルールをAIに教えなくても、AIが自らデータを参照する中で法則性を見つけ出し、目的を達成するといった複雑な行為が可能になりました。
この「ディープラーニング」するAIは様々な分野への応用が期待されていますが、現実にもう仕事をしているAIも存在しています。文章解析・仕分けといった、人間がやると時間のかかる作業にAIが進出しているだけでなく、一部では接客をおこなっているAIも存在するそうです。
AIが今後どのような分野において活躍するのかについて、『日本経済新聞』のコラム「人工知能の実力(全3回)」は次のような予測を提示しています。
東京都港区にある情報解析サービス会社、UBICの本社ビル。ガラス張りの部屋に端末や大型スクリーンが並ぶ。同社のAIシステム「バーチャル・データ・サイエンティスト」を使った大量文書の解析・仕分け作業が進んでいる。
(中略)
AIによるテキスト解析のスピードは人間の約4千倍。「弁護士らを単純な作業から解放し、コストを大幅に削減する」(UBIC)。同社は不正発見のための文書解析や、医師の暗黙知を学習して医療上の判断を支援するシステムなどにAIの応用先を広げている。(『日本経済新聞』2015年8月3日朝刊、「人工知能の実力(下)頭脳労働、ロボもこなす――雇用減の対策必要に」)
この記事が示唆する内容は重大です。それまで機械が代替する人間の労働は、「肉体労働」の分野に限定されていました。ところがAIの発達した今、機械が代替できる仕事の幅は格段に広がり、「頭脳労働」の分野にまで進出しているのです。