1.「世界の一体化」の中で、日本はどうあるべきか?
20世紀が戦争の世紀ならば、21世紀は国際化の世紀です。17世紀より連綿と続いてきたグローバル化、あるいは「世界の一体化」という現象は、この21世紀において一つの完成形に到達したと言うことができるかもしれません。ヒト、モノ、カネそして情報は、かつてない規模と速度とで取引されています。私たちが享受している身の回りの製品が、遠い異国で生産されたものであるなどということは、特段驚くことでもなくなってきています。
近年、特にめざましい進歩を遂げているのは、「情報」、すなわちICTの分野です(少し前までは“IT”と言われていましたが、最近は“通信(Communication)”も含めて“ICT”と言いなおされているようです)。この文章を閲覧している人たちは皆すべて、ICTの恩恵に浴しているといっても過言ではありません。SNSの普及やビッグデータの活用といった個々の事例は、人びとの生活を表面的に変えるだけでなく、これまでには考えも及ばなかった分野に対して、人間の叡智が及ぶことを可能にしています。
人類が獲得してきたこれまでの歴史のなかで、こうも変化が激しい時代などは存在しなかったでしょう。新しい技術が次々と生み出され、新しい状況が次々と発生している以上、そうした技術を適切に用い、またそうした状況を適切に踏まえることは、今までになく重要になってきています。
情報は少し古くなりますが、ここでIMD(国際経営開発研究所)が提示した一つの調査結果を参考にしてみましょう。それによれば、日本の国際競争力は1991年時点では1位でしたが、その後は順位を落としてゆき、2015年時点では27位にまでランクダウンしています(「かつては1位だった世界競争力ランキング、2015年日本は27位」(http://thepage.jp/detail/20150603-00000003-wordleaf)、2015年8月4日閲覧)。ちなみに2014年時点では21位だったそうですから、日本は順調に(?)順位を下げていることになります。このことは、国際的な変化の流れに対し、日本がまだ明確な将来像を描けていないということを示しているものといえるでしょう。
当然、日本側も手をこまねいているわけではありません。日本政府は未来の成長戦略を描く切り札として、ICTの積極的な活用を目標に掲げています(総務省「ICT戦略会議(http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ict_seichou/)、2015年8月4日閲覧」)。またICT以外の分野でも、グローバル化の流れに対応するため、政・官・学・財界が総出となって、新しい日本の在り方について模索されています。