最終話 計画
空には星が輝き始めている
地下室では既に優治が提案した計画が終わりを迎えていた
「イイ計画だったわ!優治君!」
リサは自分のディスクに座りながら優治に向かって言う
「あ、ありがとうございます。まさか、この計画に二人共賛成するとは思いませんでしたが.....」
「なに言ってんの?賛成するに決まってるじゃない!この計画も絶対成功させようね」
洋子が笑顔になりながら優治に語りかける
「う、うん.....」
優治が照れくさそうに洋子に言っていると........
ガタンッ!
急に立ち上がるリサ
「リ、リサさん?」
蒼白な顔をしながら優治と洋子を見るリサ
「ふ、二人共.....逃げて!」
「エッ.......ど、どういうことですか?」
「まずいわ!ここに警察が向かっ......」
ブッツン!!
急に暗くなる室内
だが、すぐに予備電源が作動した
地下室の上がゴタゴタうるさくなり始めた
リサが自分のディスクを退け、手動で地面に付いているドアを開け始めた
ドアの下には階段があった
「二人共!逃げて!ここは私が食い止めるから!」
「そ、そんなの無理です!リサさんを置いてなんて行けない!どうするんですか作戦は!?」
洋子がリサに向かって叫ぶ
「洋子ちゃん!あなた達でやりなさい!この地下に車が止めてあるわ、自動操縦のパスワードとエンジン機動のパスワードは57323569873456よ!それで国会議事堂まで行って!」
洋子の膝が崩れる
「優治君!洋子ちゃんを連れて早く行って!」
優治が洋子を起き上がらせようとする
「洋子さん!行こう!」
「嫌だ!リサさんを置いてくなんて無理よ!」
「大丈夫だよ洋子さん。死んだ後、またすぐに会えるよ.....」
「そうよ。洋子ちゃん!また後でね!二人共自爆の仕方間違えないでね!」
「わかりました!」
優治が返事をし、洋子が黙って頷く
「優治君!あなたの作戦もきっと成功するわ」
「はい。ご協力ありがとうございました!」
優治はそうリサに行って地下室に入り始める
「リサさん!」
「洋子ちゃん!大丈夫!さっきも言ったけど、すぐに会えるわ!」
「はい.....」
洋子は泣きながらリサに抱きつく
「リサさん!助けてくれてありがとうございました!」
そう言って洋子も地下室へと入っていった
地下室を降りる
黒の四駆の車があった
優治は運転席、洋子は助手席へと乗る
「自動エンジン!!」
優治が叫ぶ
{パスワードを言ってください}
「57323569873456それと、自動操縦!!」
{自動エンジン、自動操縦のパスワードを認識いたしました}
プルルルルッ!
車内に鳴り始める着信音
ハンドルの前に画面が飛び出し始める
優治は画面にタッチする
「優治君?洋子ちゃん?」
「リサさん!」
優治と洋子が同時に驚く
「急で悪いんだけど.....車を発進するのは合図を待って!!」
「合図?」
優治がリサに問う
「非常ベルのベルを鳴らすわ。そしたら発進してちょうだい」
「わ、わかりました.....」
だが、すぐにその合図が鳴った
ジリリリリリリリリリッ!!
赤いランプと共に鳴り響くベル
「目的地、国会議事堂!」
{目的地を確認致しました。車を発進させます。シートベルトをお付けください}
二人ともシートベルトを付ける
{シートベルト確認。発車いたします}
ナビゲーターがそう言うと車が動き始める
神社の横の地面が開き始める
車は夜の山の中へと出た
そして車は神社裏に行く
神社裏には遮る気が一本もない一本道が長く下に伸びていた
車は自動的にそこの道を降り始めたのだった
だが、優治と洋子は飛び出している画面に釘付けだった
なぜなら、リサとの電話はまだ繋がっているままだったからだ
ズドンッ!
地下室の扉がこじ開けられる
二人の刑事が先に入ってきた
そのあとに透明の盾を持った警官達も入ってくる
「よぉ!爆弾女!」
顔が包帯でグルグル巻きの斉藤がリサに向かって言った
「あら?誰だっけ?」
「てめぇ!ぶっ殺す!」
斉藤がリサに向かって銃を構える
「待て!斉藤!」
「竹さん!なにするんですか?」
斉藤の横にいる竹田が銃を持っている腕を掴む
「まあ、待て斉藤!よお姉ちゃん、他の二人はどこやった?」
「........二人?.....ああ私の友達ね!死んだわよ!」
「いや、その二人じゃねえ!田中優治と津野田洋子だ」
「誰かしら?それより、なんでこの場所がわかったの?」
リサが竹田に向かって言う
「おいおい、おめえは立場的に質問できる人間じゃねんだよ.....それより本当に知らないんだな?」
「知らないわ」
「じゃあ、仕方ねえな、斉藤殺してもいいぞ!」
「へへへへ.....」
斉藤は銃をまたリサに向ける
「じゃあな。爆弾女!最後に言っとくがココの場所の特定なんて簡単なんだよ!お前、何回政府にハッキングかけたかわかってんのか?」
「打ち上げ花火」
{承認しました}
「は?」
「ドカ~ン!!」
「てめっ.....」
リサの勝ち誇った笑みと一緒にその地下室が光に包まれた
車が舗装された道に出た瞬間
物凄い爆発音が聞こえた
優治はすかさず車内から降りてきた道を見上げた
優治が見つめる先は赤い光がただユラユラと揺れているだけだった
最後にリサが言った言葉が神社を丸ごと吹っ飛ばす合言葉だったのだろうと優治は思った
優治は静かに前を向く
飛び出している画面を消す
そして、洋子の方を見た
洋子は両手で顔を隠して泣いていた
優治は洋子の肩に触れる
洋子は両手を顔から外し、優治の顔を泣きながら見る
「洋子さん。もうすぐ終わりだ。頑張ろう!何かをやって俺達もリサさんが行った所に行こう!」
「....うん.....」
涙を手で拭く洋子
「泣いてなんていられないもんね!うん!ヨシッ!やろう!」
洋子を見て頷く優治
だが、車の上から大きな音が聞こえ始める
優治が窓から空を見上げた
そこにはヘリコプターが優治達を見下ろしていた
優治はすかさず首を引っ込める
「ど、どうしたの?何?」
「ヘリだ.....」
「え?」
洋子小さな驚きと同時に夜の山道を走っている車が空から照らされた
『指名手配犯に次ぐ!直ちに止まりなさい!』
ヘリコプターから警察が命令してくる
「クソッ!」
ハンドルを叩いて叫ぶ優治
するとハンドルを叩くと同時にまた、画面が飛び出してきた
{ナビゲーションシステム起動}
「え?」
「優治君?これ、この車もしかして人工知能付いてる?」
「え?わ、わから....」
{はい。その通りです。人工知能搭載の車です}
優治と洋子があたふたしていると画面が話し始めた
「付いてたね」
「う、うん。付いてた。」
そして、ナビゲーションはこの車に搭載されている様々な機能を優治と洋子に説明し始めた
優治と洋子はただ、画面を見ながら黙って聞いた
「今俺たちの上に飛んでるヘリを調べることも可能か?」
大体の説明が終わった途端、優治がナビゲーションに聞く
{はい。少々お待ちください........完了しました}
「危険性は?」
{危険性はありません。武器も積んでいません}
一瞬ホッとする優治と洋子
{しかし、私達の行き先を特定される可能性があります。なぜなら、警視庁本部と通信をしています}
「優治君?もしかしたら、私達、待ち伏せされるんじゃ......」
「いや、もしかしたらじゃない。絶対に待ち伏せされるよ!このままだったら.....」
{警察がもし、待ち伏せする可能性があるならどこで待ち伏せをするか予想しますか?}
「で、できる?」
{はい}
「じゃあ、お願い」
{かしこまりました........完了しました。都市部に入る入口で待ち伏せの可能性87%。中心街で待ち伏せの可能性11%。国会議事堂前2%です}
「洋子さん、何か考えある?」
「ごめん。全く浮かばない、優治君は?」
「あのヘリをなんとかできれば.......ナビ?ヘリを何とかできる?」
{撃ち落とすって意味でしょうか?}
「うん!そう!」
{できます。どこで撃ち落としますか?}
「山道を抜けたらお願いできる?」
{了解しました}
「洋子さん!わかってると思うけど、都市部に入る所で警察が待ち伏せしている可能性が高い」
「う、うん」
「だから、一度都市部に入る前に車を降りよう。そして、俺たちは.....」
「二人の足で行く!だね!」
「うん!」
二人はお互いの顔を見つめ合う
そして洋子は優治の手を握る
優治の手は少し震えていた
{上空のヘリコプター一機を撃墜します!}
ナビゲーションの声と共に車のボンネット部分と後ろの部分から無数のロケットランチャーが飛び出し始める
{耳を塞いでください}
優治と洋子は耳を手で塞ぐ
そしてロケットランチャーがヘリに向かって発射させれた
------
都市部に入る為の道は決して一つではない
だが、ニート二人乗っている車が都市部に入る為には高速道路以外は一つしかない
数分前に連絡が途絶えたヘリコプターの情報によるとニート二人は高速を使わないとの事だ
なので、警察が取る行動は一つしかなかった
都市部に入る為のある道路を警官隊が武装して道を封鎖した
時間は夜中の一時半を回っている
警官隊の誰一人として緊張してる者はいなかった
なぜなら決して凶悪犯ではないからだ
ただのニート
発砲許可も出ている
そして、警官隊の見つめる先に車のライトが見え始めた
数分前に連絡が途絶えたヘリコプターの情報と一致している車が徐々に警官隊の方へ向かってくる
向かってくるに連れてスピードを落とす四駆の車
そして、警官隊の数メートル先で車が完全に停車したのだった
「無駄な抵抗は直ちにやめろ!武器を捨て、投降しなさい!」
マイクを使って話し始める警官
しかし、車からはなんの反応もしない
警官隊の指揮を取っている男がが黙りながら警官隊に向けて手だけで指示を出す
それに従い車を囲む警官隊
そして、徐々に車への距離を縮めていく
一人の警官が銃を構えながらドアノブに手をかけた瞬間
一瞬の光と共に車が爆発した
物凄い大きな爆発音を聞きながらも優治と洋子は別ルートから都市部へと入った
そして、二人共ただ、一点を見つめ走る
だが
パンッ!パンッ!
銃声が走ってる二人の後ろから聞こえた
二人に向かって撃たれたのだ
だが、幸い二人には当たらなかった
「キャッ!」
驚きのあまり叫ぶ洋子
洋子を見た瞬間優治は洋子を掴み路地へと入る
「大丈夫洋子さん?」
「うん!大丈夫.....ゴメン。驚いちゃって。それより」
「うん。追われてる」
そう言って優治は腰に付いてる手榴弾型の爆弾に手をかける
そして、撃たれた方向に向かって爆弾を投げた
大きな爆発音が都市部に響き渡る
この爆発で何人の死傷者が出たのかなんて二人には関係なかった
二人共ひたすら大通りを走る
優治が投げた爆弾の方角からは叫び声やサイレンの音が聞こえる
しかし、二人共それには目もくれないでただ走った
------
何回撃たれただろう
何回爆弾を投げただろう
二人共死んでないのが不思議だった
ボロボロな体
走って疲れきった体
そして、二人共目の前の光景を見てただ立ち止まる事しかできなかった
(なんだよ.....これ.....)
目的地の国会議事堂の門の前には数百人.....いや、数千人はいるかもしれない警官隊が立ちはだかっていた
そして警官隊全員が優治と洋子に向けて銃を向けている
「結局無理だったね」
洋子が国会議事堂を見ながら話し始める
「うん。ダメだった.....」
優治も国会議事堂を見ながら言う
「でも、なんだろう?なんでだろう?なんか、上手く言えないけど......なんか悔しくない」
「うん。そうだね。俺......何もできなかったあの時とは違う気持ちだよ今」
「私も......ねえ優治君?」
「なに?」
「ありがとね」
「洋子さん、俺にお礼言ってばっかり!でも、俺もありがとう」
「優治君もお礼言ってばっかりじゃん。ねえ?死んでもまた、会えるかな?」
「会えるよ。リサさんも待ってる」
「うん。そうだね。もう一つの作戦成功すればいいね」
「うん」
「........」
「........」
「優治君、じゃあ,,,,,,」
「うん。やろうか」
そう決意し二人は右手で左胸を叩く
「私は」
「僕は」
「自爆する!!」
---捜査本部---
「ナンバー4574田中優治死亡確認」
「ナンバー5321津野田洋子死亡確認」
パソコンの画面を見ながら声を張り上げる刑事
「はいよ。で?この計画、いつ頃終わりそうかね?」
二人の後ろから話しかける一人の刑事
この二人よりは位が上の人なのだろう
「確実とは言い難いですが、来週中にはすべて終わると思います」
一人の刑事が言う
「そうか.......じゃあ、上にもそう連絡しとくか......」
そう言って自分のディスクに向かい、電話をし始める
「どうも。はい、警視総監をお願いします....ええ、現状報告を.....」
------
次々とニートがいなくなっていく中、朝を向かえる
中心街は通勤ラッシュのせいで色々な音が鳴り響いている
朝のニュースで昨夜起きた爆発のニュースが取り上げられていた
優治と洋子それにリサの指名手配の写真がニュースには出ており、この三人の犯行、そしてこの三人を警察が射殺した事になっていた
家でニュースを見ながら泣き始める田中優美
その横でそっと自分の妻の肩に手をやりながらニュースを見つめる田中治郎
そして見ていたニュースが砂嵐に変わる
治郎は不思議に思い、他のチャンネルに変えてみる
だが、どのチャンネルも砂嵐のままだ
「一体何が......」
そう言った途端
テレビに自分の息子が現れたのだった
呆然としながら治郎が
「お、おい、優美!て、テレビ.....」
っと顔を抑えながら泣いている妻に語りかける
優美はゆっくりと顔を上げテレビを見る
「え?優治?」
二人共一体何が起こってるのかわからなかった
なぜなら射殺されたとニュースで報じられた我が子がテレビの中から自分達を見つめているのだから
大型ビジョン、電車や車内についている小型テレビ、携帯電話のテレビ、インターネット番組
そのすべてに今、優治の顔が映し出されていた
通勤や通学で歩く人は足を止め
何が起こったのかと慌て始める
そう、優治の計画は電波ジャックだった
~~~~~~
「なに?計画って?」
リサが優治に聞く
「はい。まず、リサさんここの機材で電波ジャックってできますか?」
「どういう事?」
不思議がりながらリサはさらに優治に問う
「ええっと.....リサさんや洋子さんの過去を聞いて思ったんですけど、今いるニート達の中には好きでニートになりたかった訳ではない人がいると思うんです」
「しょうがなくニートになったって事?」
「はい。それをその.....他の日本国民の人達にわかってもらいたいんです!」
「それで、電波ジャックして、それを国民に知らせたいと?」
「はい.....やっぱダメですよね?」
少し考え込むリサ
そして
「いえ!面白いわ!やりましょう!」
「うん!私もそれ面白いと思う!」
洋子も賛成してきた
「じゃあ.....」
「ええ!もちろんOKよ!やりましょう!」
~~~~~~
テレビの中で咳払いを一回する優治
真剣な面持ちで優治は口を開き始めた
「日本国民のみなさん!僕の名前は田中優治......今、全国指名手配にされているニートの一人です。多分これが流れている時には僕はこの世にいないと思います。なぜなら、昨夜、国会議事堂に自爆テロをしに行ったから.....。なぜ、そんな事をしたのかと言いますと、僕は日本という国を恨んでいるから。僕は中学時代、親友を亡くしました。彼はイジメを受けてた。そして、僕は何もできなかった。助けてあげられる立場でありながらも助けた上げられなかった。そして彼は自殺をしました。僕は何もできなかった事を後悔しました。もしあの時俺が話しかけてあげていれば....そんな後悔ばっかりしてました。そして、今度は僕がイジメの対象となりました。そして、僕は引きこもるようになった。今、この話を聞いている人達の中にはくだらないと思ってる方もいるかもしれません。でも、聞いてください!僕は.....僕は好きでニートになった訳じゃない!友達が自殺した時に先生にイジメがあった事を話しました!でも、先生は何もしてくれなかった!もう、僕はその時点で誰も信じるのが嫌になった!だから、僕はこの国を恨む。こんな人間を作り上げ、心から信頼できない人間を作り上げたこの国に復讐する為に僕はテロを起こす事を決めました!長くなって申し訳ありません。でも、日本の皆さんこれだけは覚えいて欲しい! すべてのニートが好きでニートをやってるのではないのだと!そして、今、生き残っているニート達、あなた達がやれる事を今、死ぬ前にやってほしいです。最後に、父と母に言いたい。警察が家に押し掛けてきた時僕を守ってくれてありがとうございました」
そして、テレビ画面がまた砂嵐に変わる
数秒後、さっきまで流れていたニュースがまた、流れ始めたのだった
--首相官邸---
「よ、よろしかったのですか?」
椅子に腰をかけ、窓から外を見ている総理に話かける秘書
「問題はない」
「し、しかし!何か対策を練る方向を取ってもいいかと......今のテレビを見て国民が.....」
「何も変わらんよ!」
そう言って立ち上がる総理
「何も変わらない。結局人間てのはね、自分が可愛くてしょうがない生き物なんだよ。それと、日本人てのはね行動起こす決断力が欠けていてね。だから反発なんてものはないさ」
「はあ.....」
「それに、私が総理大臣でいる限り国民の意見が変わるなどありえない。日本はまだまだ成長する。それを妨げるの者が出てくるのであれば、また排除するまでさ」
そう言って静かに笑い始め、また椅子に腰をかけたのだった
------
[ライダーさんが入出しました]
『あれ?ボスがいない』
『ボス?』
『ボス~??』
『ボス』
『ボス』
『お兄ちゃん』
『死んでくれてありがとう』
[ライダーさんが退出しました]
---完---