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第5話 井上リサ

リサに言われ、優治と洋子は服を着替えた

二人共、黒のTシャツに下はリサと同じの迷彩服の長ズボン

そしてリサが履いているのと同じ軍人が履いているような革靴を履いた


「それとこれも羽織って」


リサはそう言って二人に紺色のチョッキを渡してきた


「これは?」


優治が不思議そうにリサに聞く


「これは爆弾よ!」


リサが真剣な表情で言ってくる

嘘ではないのだろうと二人は思った


「まるで防弾チョッキみたいですね」

「それも兼ねてるわ」

「え?どうゆうことですか?」

「う~ん。簡単に言うと表面が防弾チョッキみたいになっていて、中には爆弾があるのよ」


すごき高性能なのだと優治は感心した


「そっか、もし、撃たれたら、爆発しちゃうから防弾にしてるのか!」


洋子が言う


「その通りよ!じゃあこのチョッキの使い方を説明するわね」


そう言ってからリサは二人に爆弾チョッキの起爆の仕方を教えた

二人共真剣に聞く

起爆の仕方は本当に簡単なものだった


「質問はある?」

「ないです」


優治は即答する

しかし、優治の横で手を少し上げる洋子

どうやらリサに質問があるようだった


「どうしたの洋子ちゃん......」

「もし、作戦が失敗した時は自分の意志で自爆してもいいですか?」

「うん。そうしてちょうだい。アイツ等もそうしたから.....」


洋子と優治はリサが見つめる二つの机を見る

ここに入ってから最初に疑問を持った二つの机

パソコンがあるのに電源が入っていない二つの机


「あの?あれって.....」


優治は恐る恐る聞く


「あれは私達と同じニートだった人達が使ってたの」

「あの.....じゃあ.....」


洋子は最後まで聞くことができなかった

だが、リサは言った


「そうよ!もう死んじゃったの!自爆してね........そうだ、私の過去も話しとこうかな?二人の過去聞いといて私だけ話さないってのもね......」


そう言ってリサは語り始めた

井上リサの過去を........




~~~~~~




喫茶店の中から外を見ながらため息を吐く


(また、ダメだった......)


もう何社目だろうか

一体いつになったら就職先が決まるのだろうか

リサはただ、ため息を吐くことしかできないでいた

一体何が悪いのだろうか

リサ自身にもわからなかった

いや、わかっていたらここまで苦労してはいないだろう


(もうニートしかないかな....)


そんな事を考えていると、リサの携帯が震えだした



メールではなく着信だった


[六角初ろっかくはじめ]


っとディスプレイに表示されていた


「もしもし?」

「リサ?今どこ?てか、どうだった?」

「聞く?」

「いや、なんとなくわかったから、聞かない。んで今どこよ?」

「駅前の喫茶店」

「OKじゃあ今から奈良とそっちに行くね~!バイビ~!」


そう言って初は電話を切った

リサはまたため息が出た




「あ!いたいた!」


初が声をかけてきた

茶髪で痩せており背も小さい

顔はメガネをかけており、そばかすが少しだけある

リサと同い年の友達だ


「落ち込んでるわね~!」


図太い声がリサの耳に入る

奈良陽介ならようすけ

一言で言うとおネエだ

背も180を超えている

こちらもリサと同い年だ




三人とも小学校からの腐れ縁ってやつだった

共通する趣味はハッキング

リサが小学五年の時に二人がいる学校に転校してきた

初が最初に声をかけてきてリサがパソコンいじりが好きだと言ったら食いついてきたのが仲良くなるきっかけだった

初はすぐさま同じ趣味を持つ奈良と一緒にその日の放課後リサの家に上がり込んできた

リサは男の子が来たことに最初は戸惑った

しかし、この時すでに奈良は女の子に目覚めていたのを知ってリサは普通に女友達として接した

そして、その日から三人で一緒にいる事が多くなっていった




「は~......もうヤダ~!!」


リサが弱音を吐く


「もう無理よ!無理!諦めなさいよリサ!」


笑顔になりながらリサに言ってくる奈良


「奈良~!あんたはもうニート?」

「当たり前じゃない!もう無理だもの!ね~初?」

「うんうん!無理無理!ウチ等ってさ、結構根暗じゃん?大学に行ってても、どこのサークルにも属さず三人で一緒にいるじゃん?」

「う!?確かに....」


初の言うことは正しかった

誰とも関わろうともせず、常に三人で神社の地下に行きパソコンをいじっている毎日

それでは社交性なんて身につけることなんてできるはずもなかった


「まあまあ!いいじゃないの!ニートでも!ウチ等もやる事やってニートになるんだし!」


やる事......確かにすべてやった

最初は三人ともIT関係の仕事に就きたかった

だが、ダメだった

もう仕事を選んでる暇なんてない

そう思った三人は手当たり次第就活に励んだ

だが、すべてダメだった

本当にやる事すべてやったの?なんて言葉を吐く者はこの三人の中に誰ひとりとしていなかった


「さて、この後どうする?」


奈良が二人の顔を見ながら問う


「どうするって?未来?それとも今から?」


リサはふてくされながら奈良に言う


「今に決まってるじゃない!ね~初!」

「どうするも何も決まってるでしょ?」


リサは二人のやり取りにため息をする

ため息をする事に幸せが逃げていくと言われるが、もう逃げる幸せはリサの中には残っていなかった


「じゃあ、行きますか......」


リサがそう言うと三人で喫茶店を出た




~~~~~~




「じゃあ就活の失敗が原因でニートに?」


話が一区切りついたところでリサに問う優治


「まぁ、恥ずかしいけど、そうなるわね.....」

「結局リサさんの友達二人も就活失敗でニートになったんですか?」


今度は洋子がリサに質問した


「うん.......結局、私達は就活失敗でこの場所にいる事が多くなったわ.......」




~~~~~~




外は蒸し暑い

だが神社の地下の中は涼しくとても快適に過ごせていた

部屋にはクーラーも完備し、冬には暖房も付けることができた

水も、電気も、ガスもすべてある

中学時代から三人でここを使い始め、いろいろと改造し、ここまで出来上がった

この三人の秘密基地は三人にとって大切な場所だった

そして、気がつけば、三人でニートになってから半年が経過していた




「なんか、お腹減ったな~!」


初が叫び始める

二人共初の叫びなど無視してパソコンをいじっていた


「コラッ~!なんでシカトするかな~!!」


初は席を立ち上がる


「注目!!」


腰に手をやり、さらない叫び始めた


「もう!うるさいわね!何よ!」


リサが怒る


「あんまり怒りると老けるわよリサ!」


奈良がリサにすかさず言った


「もう二人共!!外出るわよ!外!なんか食べに行こう!!」


初は提案する

だが二人の顔はその計画に乗るきではない顔だった


「ちょっと!なんで?なんでなの?お腹減ってないの?」

「減ってるわよ......でも.....ねえリサ?」

「そうね.....外暑いし......」

「ダメッ!決まりなの!さ!行くわよ!」


初はリサの腕を掴む

リサもあまりのしつこさに観念した


「わかったわよ!」

「うん!うん!それでいいのよリサ!!!そして....奈良!あんたも準備よ!」


初はそう言って奈良の方を見る

だが、奈良はパソコンの画面を凝視していた


「もう!ちょっと!奈良!」


ずかずかと歩きながら初は奈良がいる机へと向かう


「何見てんのよ!?早くしなさい!!.........奈良?」


初が奈良の様子に不思議がる

それを見ていたリサも立ち上がり奈良と初の方へ向かった




奈良が自分のパソコンを震える手で指差す

奈良の顔はものすごく怯えていた


「これ、見てよ......」

「何よ?」


初は画面を覗くように見始める

リサも初の後ろから見る


「何これ?盗聴記録?どこの?え?日本政府?なになに.........」


初は言葉が出せなかった

リサもただ画面に出てる文字を眺めることしかできなかった




3人とも言葉を失う


「こ、こ、これってう、嘘よね?」


リサが震える声で言い始める


「う、嘘じゃないわ.....」


奈良も震える声で言った


「に、に、ニートが全国指名手配?て、てか誰からの情報よ!」


初は奈良に問いかける


「ピボットよ......」


『ピボット』は三人がハッキングをしている内にネット上で知り合ったハッカーだ

ハッカーの中ではかなりの有名なハッカー

その名前が出ればリサも初もこの情報は嘘ではないのだと納得してしまった


「じゃあ!他のニートにも教えないと!」


初が言う


「無理ね.......あんた、今それやったら馬鹿にされて、挙句の果てには炎上よ!!運が悪ければこの場所だって特定されるわよ?」

「じゃあ!どうすれば!?」

「そんなの私がわかるわけないじゃない!」


初と奈良が口論を始めようとしたその時

リサが口を開く


「私達だけでも生き延びる事を考えましょう」


リサの方を黙ってみる初と奈良


「それ以外......ないでしょ?」


リサは黙ってこちらを見ている二人に言った


「私達は運がいい。この情報を知れたのだから、なら生き延びる術を準備できるはずよ!」

「無理よ!」


奈良が立ち上がりリサに怒鳴る


「あんた!わかってるの?今の日本の警察の事!?生き延びる?イコールそれは逃げ切るって事よ?」

「じゃあ他に何があるってのよ!」


今度は奈良とリサが口論を始める


「そんなもん私にわかる訳ないでしょ!」

「は?何言ってんのよ!奈良はいつもそうよ!いつもそうやって人を批判してばっかで自分では何もしようとしないじゃない!!」

「ちょっと!それどうゆう意味よ!ぶっ殺すわよリサ!?」

「やってみなさいよ!どうせそれも口だけでしょ!」

「このブス~!!!」


奈良がリサに掴み掛かろうとした時


「待って!やめて!」


初が間に入って叫んだ


「どきなさい初!このブスぶっ潰すわ!」

「やってみなさいよオカマ!」

「お願い!二人共落ち着いて!!」


初は奈良にビンタ

続いてリサにもビンタした


「......」

「......」


リサと奈良は初にビンタをされて黙る


「二人共落ち着こうよ!ね?ケンカしても意味ないって」

「ご、ごめん」

「わ、悪かったわね」


リサも奈良も互いに謝る


「そ、そうよね。こんな状況だもの落ち着かないとね」


奈良が言い始める


「うん。ごめんね奈良。酷いこと言って........」

「いえ、私もごめんなさいリサ」


二人で見つめ合いながら謝る




四人用のテーブル

その周りには四つの椅子

テーブルの上には三つのマグカップが置いてあった

リサと奈良隣通しに座り、テーブルを挟んで初が座った


「私ね、思ったんだけど.....」


初が話し始める


「私達には選択肢があると思うのよ」

「選択肢?」


初の意見に奈良が問う


「うん。私が言ったように他のニートにも教えるのも一つの選択肢」

「でも!」

「わかってるわ奈良。奈良の言う通りリスクが高すぎて、自分の首を絞めかねないわ」

「じゃあ他には?」


今度はリサが初めに質問した


「リサが言ったように、逃げるのもアリ!......でも今の警察相手に私達が逃げ切れる保証はどこにもない」

「そうね」

「うん。奈良の言う通りだったわ。私達じゃ逃げ切れない!でもこのまま捕まるって事?」


リサが怯えながら二人に問いかける


「私考えたんだけど.......怒らない?」


初が二人に少し怯えながら話し始める


「大丈夫よ!聞くだけ聞くわ!ケンカなんてしてる状況じゃないもの!ねえリサ?」

「奈良の言う通りよ初!」

「う、うん.......えっと.....戦う......」

「は?」

「警察と、日本政府と戦う!」


初は立ち上がり言い切った

奈良とリサは驚く事しかできなかった




「ちょ、ちょっと初!な、なに言ってるのかわってるのあんた!?」


奈良が初に向かって叫ぶ


「お、怒らないって言ったじゃない奈良!」

「怒ってないわよ!」

「怒ってる!」

「ちょっと話が脱線してるって!」


このままでは怒ってる怒ってないの言い合いだと思ったリサはすかさず言った


「そ、そうね.....」

「う、うん。ごめん」


二人は落ち着きを取り戻し一旦座った


「初、何でそんな事思いついたの?警察から逃げるよりも難しいわよ?」

「だってこのままだったら、何もできずに終わりだよ?私たちの人生!」

「そりゃあそうだけど......でも、捕まったて死ぬわけじゃないでしょ?」


奈良がもっともな意見を初に言った

初は黙り込んでしまった


「ちょっと調べてみようよ」


リサが奈良に言う


「う~ん。それもそうね.....私達がこのまま口論をしてても一向に話が進まないわね」

「うん。リサの言う通りかも!とりあえず調べようっか!」


三人は席を立ち、それぞれの机に向かった




「二人共こっちに来て!」


奈良が叫び始める

リサと初は二人で奈良の所へ向かった


「電話の盗聴データよ!!」


リサと初は唾を飲む

奈良は二人の顔を見てデータを再生させた


{では、ええ。もう決まりと言う事で、ええ。ですが、まだご内密に。ええ。ええ。}


首相の声

誰かと電話しているのだろうか


{はい。捕まえたニートは、ええ。そうですね、殺してください。はい。ええ。ええ。}


奈良が一時停止させ、二人の顔を見る

二人共目を大きく開け、ただ黙っていた


「もう。やる事は決まったわね」


そんな顔をしている二人に奈良は言った


「このまま何もしないままだったら......」

「死ぬ」


奈良が言い終わる前にリサが言った


「でも、何をすればいいのかしら?政府と戦うって言ったて......」


奈良が二人に質問した


「私が思ったこと言っていい?」


初が二人の顔を見ながら言った


「なに?」

「いいわよ。言ってみなさい」

「自爆テロ......」


馬鹿げた提案

だが、二人はそうは思わなかった


「あれ?奈良?怒らないの?」

「怒る?馬鹿言ってんじゃないわよ。ねえ?リサ?」

「うん。だた待ってても殺されるだけ、武器もなく三人だけで日本と戦うのはまず無理。なら、命を犠牲にしてテロを起こしたほうがよっぽどいいかもね」

「ほ、本当にするの?」

「あら?初、あなたから言い出しのに何よそれ!」

「いや、ただの思いつきだったし、奈良に怒られるかと思った」

「言ったでしょう。この状況を知ってるのは私達三人だけ。ならこれで行きましょう!」


奈良は立ち上がり机の上に手を置く


「うん。やろう!」


リサが奈良の手の上に自分の手を重ねる


「うん!」


そして初も手を重ねた




------




ニート殲滅作戦を知って一ヶ月が経過した

爆弾作りは順調だった

だが、問題が一つあった

それは.......


「計画執行の日時がわからない!」


初が二人に言う


「ダメね。私もいろいろな所にハッキングかけてみたけど見つからなかったわ」


奈良が嘆く


「同じく私も」


リサはそう言ってため息を吐く


「難しいわね。計画執行が明日かもしれないし、一ヶ月後、又は一年後かもしれない」

「確かに奈良の言う通りね.....」


三人はため息しか出なかった

死ぬ恐怖はない

ただ、何もできず殺される恐怖だけはあった




さらに一ヶ月が経過した

進展があった


「二人共見て!」


パソコンをいじっていた初が叫ぶ

二人は爆弾を作る手を止め、初のもとへと向かった


「な、なによコレッ!」


奈良がパソコンの画面を見て驚く

画面の中には約八十万人のニートの名前がズラリと映し出されていた


「これって......」


リサも驚く


「政府のサイトにハッキングかけたら......」

「もういいわ初。わかったわ。」


奈良は納得したのだ

いや、奈良だけではない

リサも初も納得した

もうすぐニートを殺す計画が始まる事を




二日後

リサと奈良が作業に没頭していると初が何気なく誰にでもなく言った


「お母さん達にお別れの挨拶したいな.....」


リサと奈良の手が止まる


「確かにそうね.....」

「うん......」

「なら、行こうか?」


初が提案する


「そうね」

「うん、でも爆弾は持って行こう!いつ計画が始まるかわからないし.....」


リサがそう言うと奈良と初も頷いた


「でもリサ!爆弾チョッキまだ一つできてないじゃない!」

「う~ん....じゃあ二人が着て!」

「え...でも....」

「いいの!いいの!」


リサはそう言って二人に爆弾チョッキを渡した

そして三人で神社を出た



外はもう真っ暗だった

夜空には無数の星が輝いていた

車に三人で乗り込む


「ちょっと、もうすぐで0時じゃない!私の親完全に寝てるわ~!」


奈良が車の時計を見ながら言う


「ウチも寝てるかも....初ん家は?」

「ウチはこの時間ならまだ、起きてるよ.....」


奈良が後部座席に座ってる初の方を見る


「なら、最初はあんたの家ね」

「え?いいの?」

「いいわよ。ねえ?リサ?」

「うん」

「あ、りがとう.....」


その言葉を聞いて奈良はエンジンをかけ始めた




ピッ!ピッ!ピッ~!!


車のラジオから響き渡る0時を知らせるチャイム

車内で三人に会話はなかった


{0時になりました.......}


ラジオから聞こえてくるニュースの声


{ここで、急遽入ったニュースを読み上げます......}


少しラジオの音量を上げる奈良


{只今、日本政府はニート約80万人を指名手配にする事を発表しました........繰り返します}


急ブレーキを踏む奈良


「ま、まずいわね......」

「ど、どうしよう!」

「どうするもこうもないわ、初!あんたの家だけでも挨拶しに行きましょう!」

「奈良!あんた本気なの!?」

「リサ、本気よ!」

「でも、ここは一旦神社に戻るべきよ!」

「もう、ここまで来ちゃってるわ」

「奈良!リサの言う通りよ!」

「初!あんた、私に言ってたじゃない親に謝りたいって.......ニートになってごめんなさい!って」

「そ、そうだけど.......」

「後悔しない為にテロをするんでしょ!?なら、こっちの方も後悔したらダメなんじゃない?」

「な、奈良......」

「リサ!?いいわね?」

「しょうがないわね!良いわよ!初!ちゃんと謝ってきなさい!」


リサは笑顔で初を見ながら言った


「ふ、二人共.....あ、ありがとう!」


初は二人に泣きながら感謝した

だが、三人のこの判断は間違っていた..........





深夜の住宅街

奈良が運転する車が静かに走っている


「奈良!そこの角で降ろして!」

「え?何で?ここ曲がったらすぐじゃない!良いわよ!目の前まで行くわ!」

「ううん。一人で行きたいから、だから二人はここで待ってて!」

「....OK!わかったわ!」


そう言って奈良は車を停車させた


「じゃあ、私達はここで待ってるから、初!行ってきなさい!」

「うん。じゃあ、ちょっと待っててね!」


初は元気よくそう言って車から出ようとする

まるで今、三人が指名手配を受けてるとは思えない状況だった




数分が経過した

奈良とリサは車から出ていた

二人で初の家があるだろうと思われる道を見ていた


「遅いわね.....」

「まあ、しょうがないんじゃない、ほら、あの子の家って結構有名じゃない?」

「そ、そうだったね....初怒られてないかな?」

「リサ?昔、初のお父さんによく三人で怒られたわよね?外で遊べって!」

「ああ!あったね~!初の家デカイから、庭も大きくてさ!私達は縁側でずっとパソコンだったもんね!」

「懐かしいわね.......」

「.......」

「リサ?」


急に黙り込むリサ


「ちょっとリサ?なんで急に黙るのよ!」


黙り込んでいるリサを見る奈良

だが、リサは固まりながら遠くの方を指差していた


「な、奈良?あ、あれ......け、警察じゃない?」

「....え?」


リサの指差す方を見る奈良

サイレンの音は出てないものの、パトカーが徐行しながらこちらへと向かっていていた




(ま、まずい!)


そう思った奈良はすぐさま走り出す

リサも奈良に続く




でかい門の前で立ち止まる奈良

門の扉は開けっ放しだった

リサも奈良の横に並ぶ

門と玄関の間はかなり離れている大屋敷

小さい頃から奈良と一緒に何回も訪れた場所だ

だが、今は昔の思い出に浸ってる暇なんてなかった

二人は門をくぐり玄関へと走り始めた




リサと奈良が玄関につく前に

玄関のドアが開く

初と初の父親と母親が出てきた


「リサ、奈良!どうしたの!?」


「初!まずいわ!警察よ!」


初を見た瞬間に怒鳴る奈良


「え?奈良?なに言ってんの?」

「本当よ!早く!」


奈良がもう一度叫ぶ

それと同時にリサも


「初!早く!逃げるよ!」


必死の顔の二人を見て、初は二人の元へと走り出した


「バイバイ!パパ!ママ!」


っと言って......

だが、


パンッ!


乾いた音が住宅街に響いた


「キャッ!」


初が驚きのあまり叫んで尻餅をつく

リサと奈良は後ろを振り向く

門の前には一台のパトカー

その前に二人のスーツ姿の刑事

一人は中年の刑事、もう一人は若い女刑事だった


「初!大丈夫!しっかりして!」


初の方を見ずに奈良が初に問いかける


「な、何?何が?起こったの?」

「警察が撃ってきたわ!」

「.....え?」


初はまったく状況が掴めていない


「中に入りなさい!」


すると初の父親が三人に向かって叫ぶ

三人は急いで玄関へと向おうとした




「動くな!両手を挙げろ!」


中年の刑事が叫ぶ

三人は足を止め何も言わず手を上げる

刑事二人が銃を構えながら一歩一歩近づいてくる

だが、急に


「初は渡さない!」


そう叫んで三人の前に大の字の姿で立つ初の父親と母親


「どけ!」

「どかない!」

「どきません!初は絶対に私達が守.......」


パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!


銃声が響き渡ると同時に三人の前に立っていた初の父親と母親が倒れる


「ウワァァ-----!!!」


初は泣き叫びながら父親と母親に向かっていった


「パパ!ママ!」


血だらけの父親と母親を見ながら叫ぶ初

だが、泣き叫ぶ初の後ろから銃を突きつける中年刑事


「六角初だな?立て!」


泣きながら静かに立つ初

そして、刑事の方を向く

初の顔に銃口を向ける中年刑事


「初!!」


奈良が初に向かって叫ぶ


「あんたら!絶対に許さない!」


そう言って、右手を左胸に思いっきり押し付けながら初は泣きながら叫ぶ


「私は自爆する!!」


{ピピッ!認証しました}


その声を聞いた瞬間奈良とリサは家に飛び込んだ!





ドッカーン!!!


でかい爆発音

家の三分の一が吹っ飛ぶ


ドコンッ!


地面に叩きつけられる大きな長方形の箱

それを腕で突き破り、外に出始める奈良

奈良の後にリサも外に出た




家に入った瞬間奈良は大きな長方形の箱、いや、下駄箱が目に入った

奈良は迷ってる時間なんてなかった

リサの腕を引っ張り、一緒に中に入ったのだ


「は、初......」


リサは燃え上がってる門の方角を見ながら言った

だが、火の中から黒い影が立ち上がる

そしてフラフラと歩きながら

二人の方へ向かってきた




服は焦げ、肌がダラダラと溶け二人を見下ろす女

片手には銃が握られている

さっきの女刑事だ


「お、お前ら....よくも.....」


女刑事はそう言うと銃を二人に向けた


「ウワァーーーーー!!」


そう叫んで奈良は女刑事に飛びかかる


パンッ!


と銃声が鳴り響く

だが、弾は夜空へと向かっていった

奈良は女刑事を抑えながら


「リサ!逃げて!私もするわ!」

「で、でも!」

「バカッ!迷ってる暇なんてないでしょ!行ってリサ!!」

「む、無理だよ!奈良を置いて.....」

「リサ!!あんたがやらないと誰がやるの!!」


その言葉を聞いてリサは立ち上がりダッシュでその場を後にする





「は、離せ!二、ニート!!」


自分に馬乗りになっている奈良に叫ぶ女刑事


「大丈夫よ!もうすぐ楽になるわ!」


そう言って奈良は右手を胸に押し当てる


「私は自爆する!!」


{ピピッ!認証されました}


(リサ、死後の世界で待ってるわ!)


リサが初の家の塀を飛び越えたところで二回目の爆発音が大きく鳴り響いた




泣きながら車に乗り込むリサ

涙を垂らしながら


「オートエンジン!」

『暗証番号を言ってください』

「113489342245670238021!!」

『認証されました』


そしてエンジンをかけリサは車を発進させる

バックミラーには火と煙が映し出されていた




~~~~~~




リサの話が終わる

それを真剣に聞いていた優治と洋子


「わ、私だったら.......リサさんみたいに出来なかったと思うな......」

「どういう事?」

「もし、友達が私の目の前で自爆なんてしようとするなら私は......」

「洋子ちゃん、私はあの場面で奈良が言った事を今でも思い出すわ、「あんたがやらないと誰がやるの!」って言葉を.....」


洋子が固まる


「だからね、あの場面で死ぬよりは何かをやって死んだ方がいいかな?って思ったの。だって、死んでもあっちで私の事を二人が待ってるから怖くはないわ」

「出来る事をやるか.......」


優治が小さく呟く


「どうしたの優治君?」


洋子が優治の方を見て優治に心配そうに話しかける

すると、優治は立ち上がり


「リサさん!洋子さん!話があります!」

「なに?」


リサと洋子は少し驚く


「テロの前に俺を聞いてください!」


そう言って優治はリサと洋子に話し始めた

優治自身が今、思いついたある計画を..........

































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