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第4話 津野田洋子

言葉にならない驚き

この状況でなければ、目の前にいる金髪の女性を馬鹿にしていただろう

だが、優治は違った


(もう何もせずに終わるなんて嫌だ)


中学時代を思い出す優治

大事な親友がいじめを受け、何もできず、挙句の果てには親友は自殺をした

優治は何もできずには終わりたくないと思った


「リサさん!」

「なに?」

「俺......」


中学時代に起こった事を簡単にリサに話す優治

リサはそれを真剣に聞く


「.....だから、俺、何もできずに終わりたくないんです!だから一緒に連れてってください」


優治は立ち上がり頭を下げる


「ええ。もちろんいいわよ」


ニッコリっと笑いながらリサは優治に言った




優治は隣に座っている洋子を見る

洋子は難しそうな顔をしていた


「洋子さん?」

「洋子ちゃん、無理に一緒に行かなくてもいいのよ」

「........」


黙り続ける洋子

数秒間の沈黙の後、震える口調で洋子は


「私は昔......」


洋子も自分の過去を語り始めた




~~~~~~




キ~ンッ!!コ~ンカ~ンコ~ン!!



「はい!そこまで!」


チャイムと同時に先生が言う

高校二年生の二学期の期末テストが終わった


「どうっだった?」


後ろを振り向き、洋子に話しかけてくる千葉由紀ちばゆき

髪はショートカットで明るい性格の女の子

言いたいことははっきりと言い、気も強い

洋子とは高校一年生からの友達

いや、親友と言ったほうが正しい




「まあまあかな~」


洋子が答えると

由紀が洋子の額にデコピンをしてきた


「痛ッ!なにするの由紀!?」

「いつもそんな事言って~!出来てる癖に!」

「もう!由紀だって!なんだかんだ言って私より成績いいじゃない!」

「うん!自信あるよ!」

「はっきりと言うわね!」

「正直が一番よ!」


クスッ!っと二人で見つめ合いながら笑う

いつもの様に会話が弾む二人

洋子はそんな会話を由紀とするのが楽しくてしょうがなかった


「洋子!帰りどっかでご飯食べてこうよ!」

「だね~!もう期末も終わったし!行こっか!」


二人で鞄を手に持ち席を立った




洋子と由紀は二人で下駄箱に向かう


「ち、千葉!」


靴を履き替える由紀に声をかける一人の男子生徒

都賀妻 つがづまじんだった

バスケ部で背も高くイケメンの男の子

学年で一番人気があった


「都賀妻君?なに~?」

「ちょっといいかな.....」


洋子は少し緊張していて赤くなってる都賀妻を見て、都賀妻が何をしようとしているのか大体予想ができた




お昼時の体育館裏

洋子は少し離れた所で由紀と都賀妻を見ていた

やはり洋子の予想した通りだった

都賀妻は由紀に告白するつもりだ

二人で向かい合っている様子を洋子はワクワクしながら見ていた


(学年一カッコイイ都賀妻君に告られるなんて由紀はさすがだな~!確かに由紀も美人だしスタイルいいし!お似合いのカップルになりそうだな~!)


なんてことを洋子は二人を見ながら考えていた

すると.......


(え!!ちょっと由紀!なにしてんの!)


洋子は由紀の行動に驚く

由紀は嫌そうな顔をしながら首を横に振っている

腕もワイパーの様に振っている


(まさか!由紀!振ったの?都賀妻君を振ってるの?)


そして由紀は一人で洋子の方に向かって歩いてきた




「由紀!まさか振ったの?」


早足で歩く由紀を必死に追いかけながら洋子は問う


「当たり前でしょ!」

「な、なんで!?だって都賀妻君だよ?」

「だから何?私、ああゆうのタイプじゃないし!」


ムスッ!っとした顔で言う由紀


「そ、そうなの?お似合いだと思ったんだけどな~?」

「何!洋子!まさかああ言うのがタイプ?」


駐輪場の前に着き由紀が足を止め洋子に言ってきた


「い、いや、タイプと言うか、普通にカッコイイ.....って思う.....みたいな?」

「まぁ....確かにカッコイイわよ!でも!無理!ああゆう奴無理!なんか自分が絶対振られないって自信が顔に出てた!ちょっとムカついちゃった!」


そんな由紀を見て洋子は思わず吹き出してしまった


「ちょっと!なに笑ってんのよ!」

「ううん!何か由紀らしいって思ってさ!」

「何よそれ!さあ!この話は終わり!お腹すいちゃった!早く行こう!」

「うん!」


嫌なことは嫌っと言える由紀

洋子とはまったく違った

そんな由紀を洋子は誇らしく思いとても大好きだった




------




翌朝

駐輪場で会った由紀と一緒に昇降口に向かう洋子

下駄箱に着き、洋子はいつもの様に上履きに履き替える

由紀の方を見ると、由紀は固まっていた


「ゆ、由紀?」


心配そうに由紀に話しかける洋子


「これ!見て!」


一枚の紙切れを洋子に怒りながら見せてくる由紀

紙切れには


[死ね!ブス!調子のんな!]


っと書かれていた


「こ、これって......」

「超くだらない!」


驚いてる洋子をよそに由紀はそう言って紙をくちゃくちゃにして下駄箱の上に投げた


「さ!行こう!」

「う、うん!」


何もなかったかの様に由紀は歩き始めた

そんな由紀を心配しながら洋子も由紀の背中を追うように歩き始めた




二人で教室の中に入る

すると窓際に集まってる女子達が二人を睨みつけてきた

正確には由紀を睨んでいる

洋子には睨んでる理由が大体わかった

あの女子のグループにいる化粧が濃いギャル、木場舞きばまい

グループのリーダー的存在の子だ

そして洋子は知っていた

木場が都賀妻に好意を抱いていた事を.....

そしてその日から由紀に対するいじめが始まった




最初は陰口だけだった

だが、その陰口も徐々に陰口ではなくなっていった


「なに調子こいてんのあのブス!マジで死ねよ!」


由紀に聞こえる程の声で木場グループの女子が言ってくる

だが、由紀は怒らなかった

由紀の性格を考えれば陰口を言われた時点でぶん殴っているだろう

しかし、由紀には喧嘩をできない理由があったのだった




由紀の親は由紀が中学の時に離婚した

母親が由紀を引き取り、女で一つで由紀を育てていた

由紀は国立大学に行く為に問題を起こしたくなかったのだ




放課後の廊下を二人で歩く


「ゆ、由紀!やっぱり先生に相談しようよ!」


由紀が心配になり洋子は言った


「な~に、言ってんのよ!大丈夫!時間が解決するって!」

「でも.....」

「あ!忘れてた!洋子!今日先帰ってて!私委員会があったんだ!」

「う、うん、わかった.....」


そう言うと由紀は走って行ってしまった

由紀が見えなくなるまで心配そうな眼差しを由紀に送る洋子だった




(大丈夫かな由紀......)


由紀を心配しながら駐輪場に向かう洋子


「やっほ~!津野田さん!」


木場が洋子の顔を覗く様に話しかけてきた

木場のグループの女子達もいた


「ちょっと時間ある?」

「エッ.......」

「ね!すぐ終わるから!!」


もし由紀が同じ立場だったら断れるのだろう

だが、洋子は由紀とは違う

由紀みたいに言いたいことは言えない性格だった

だから断れなかった




学校近くの小さな公園

洋子だけがベンチに座り

洋子を取り囲むように木場と木場の友達数人が立っている

みんなニコニコしている

だがそれが作り笑いなんて事は洋子は知っていた


「津野田さん?」

「エッ!な、なに?」


急に呼ばれ驚く洋子

するとニコニコ顔だった木場の態度が一気に変わる


「あ~?エッ!じゃないんですけど~?」


髪を掴まれる洋子


「もう、メンドイからさ~。はっきり言うわ~!明日から千葉の事シカトだから!」

「......エッ?」

「エッ?じゃないんですけど~!?わかった?それともあんたが千葉の変わりになる?」


洋子の体は恐怖のあまり震え始める

自分は由紀の様にはなれないのだと改めて知らされた

弱い自分が嫌になってしょうがなかった


「わ、わかった......」


震える声で泣きそうになりながら洋子は言ったのだった


「そ!わかればいいんだ!じゃあね洋子~!」


木場達はそう言って洋子の前から姿を消した

小さな公園で一人になる洋子


(ごめん、由紀......)


この瞬間から洋子は由紀を裏切った




------




翌朝

由紀が教室に一人で入ってきた

洋子は本を読んでいた


「おはよ~!洋子!」

「.........」

「洋子?」


洋子を見ながら不思議がる由紀


「洋子~!何してんの?こっち来て話そうよ~!」


その様子を窓際で見ていた木場が洋子に叫ぶ

洋子は立ち上がり

由紀に向かって


「ごめん。由紀......」


小さな声で言った

そして、ゆっくりと木場のグループがいる窓際へと歩いて行った

由紀はその光景をただ呆然と見ることしかできなかった


「キャハハハハッ!何あいつのあの顔?超ウケるんですけど?キャハハハハッ!」


木場が由紀を見ながら言う

木場の友達も爆笑していた




その日の夜

洋子はすぐさま由紀に電話をかけた


「もしもし!」

「由紀ゴメン!本当にゴメン!」

「なに?そんな事?大丈夫!脅されたんでしょ?」


洋子の目から涙が溢れ出す


「う、うん。私.....ゴメン!!」


謝ることしかできない洋子


「もう!泣いてんの?大丈夫だって言ってるでしょ?」

「でも!でも!」

「大丈夫だから!ね?」

「.....うん.....」

「洋子の判断は正しいよ」

「わ、私、何も.....できなくて.....」

「してるじゃない!」

「へ?」

「今、私に電話してくれてるじゃない!」


さらに涙が溢れ出す洋子

由紀の器のでかさをまた知った


「だからさ、毎晩洋子が電話かけてきてくれたらさ、嬉しいかな~?」

「わ、わ、わきゃった」

「わきゃった?もう!泣いてて、ろれつ回ってないよ?」

「ぎ、ぎょめん!」

「キャハハハハッ!ウケる~!じゃあ、また明日ね!そうだ!ちゃんと履歴消しときなさいよ!見つかったら、あいつ洋子に何してくるかわかんないわよ?」

「うん。わ、わかった」


バイバイっと言ってから電話を切る

そして由紀に言われたとおり履歴を消した

話終えた後も洋子の涙は止まることはなかった




さらにイジメは悪化していった

上履きの中に画鋲

机を隅にお追いやれたり

ある事ない事を黒板に書かれ

挙句の果てには由紀の親の悪口まで書かれた

徐々に由紀から覇気が無くなっていくのを洋子は感じた

毎晩電話しても、日に日に由紀の言葉数は減っていっていた




そして、冬休みを明日に控えた朝

洋子の携帯にメールを知らせる着信音が鳴った

由紀からだった


[朝、教室行く前に屋上来て 話したい事あるから]


洋子はすぐさま自転車に乗って急いで学校へと向かった




屋上に着く洋子


「洋子!」


呼ばれた方を見る洋子


「由紀!」


由紀はフェンスの外側にいた


「由紀何してるの!」


由紀の方へ急いで向かおとする洋子


「来ないで洋子!」


叫ぶ由紀

そして、洋子の足も自然と止まる


「洋子、ゴメン!もうお別れ!」


笑顔で洋子に言う由紀


「え?」

「やっぱり.........ちょっとキツかった!最初は我慢できたんだよ?でも、もう限界だわ私」

「ダメッ!そんなのダメだよ!」

「色々ありがとね」

「ダメだよ!ダメだよ!由紀!」


泣き叫ぶ洋子


「洋子.........大好き!!」


由紀は笑顔だった

だけど、涙が流れていた

そして由紀は屋上から飛び降りた




由紀は即死だったらしい

先生にイジメがあった事を洋子は言った

だが、先生は相手にしてくれなかった

冬休みに入り、ただ泣く事と由紀が最後に洋子に向けた顔と飛び降りていく姿だけを頭に浮かべる事しかできなかった

由紀の葬式にも行けなかった

当然お墓参りにも.......

そして、冬休みが明けても洋子は学校へと行かなくなった




~~~~~~




洋子は震える声で自分の過去の話を終えた

そして洋子は隣に座っている優治を見る


「ね?優治君と一緒でしょ?私も大事な親友を殺したの......」


そして洋子は立ち上がりリサに頭を下げる


「お願いしますリサさん!私も優治君と同じで、もうなにもせずに終わるのは嫌なんです!だから、私も参加させてください!」

「........。」


リサの返事がないので洋子は顔を上げる

リサは真剣な眼差しで洋子を見ていた

リサは洋子と目が会った瞬間ニッコリと笑い


「もちろん!私からもよろしく頼むわ!」


そう言ってリサも立ち上がった

そして洋子の前に手を差し出す

洋子はその手を握ったのだった












































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