Part2:始まり
ふと、目が覚めた。少し息苦しさを感じる。
辺りを見回してみる。全てが闇、どこにも光はない。
「ラクー!順ー!悠基ー!」
出した言葉は全部、闇に消える。反響もない。
まるで泥の中にいるようだった。体全部が重く感じる。
「てかここどこだよ…」
そう言った時、一筋の光が目に当たる。上…?
顔を上げる、息苦しさが上がる。何もない虚空の空間にひびが入っている。
そこから光は漏れていた。よし、あそこに行けば…
必死で手を動かす。足を動かす。もがく―――――
「ぶはぁっ!はあはあ、何なんだよ、一体…」
暗い闇から目が覚める。
「何だ、夢か……あれ?ここは…?」
そこは緑で包まれた草原。四方に緑色の絨毯が敷き詰められ、視界の端の方には町の時計台らしきものが見える。そこに賢時は横たわっていた。
「えっと…確か教室にいて、床が抜けて、ってそうだ!皆は―」
ばっ、と飛び起きて辺りを見回すが、誰もいない。見えるのは時計台と草原のみ。そして、自分が横たわっていた場所には例の手紙。さっきまでは開いていなかった封が、まるでカッターで切ったかのように綺麗な切り口で開いていた。
「…何が書いてあるんだ?」
その手紙を手に取り、そして中に手を入れる。硬い何かに手が当たった。
「うわ!重っ!」
紙とは思えないほどの重さ、しかしそれは確かに紙だった。とりだした重い紙を開く。がさがさ、という紙のこすれる音がした。
「えーっと、何?『この手紙を読むあなた!ようこそ、DreamWouldへ!!ここであなたにはここに来た皆さんと戦って、勝ち抜き、神の元へたどり着くよう、頑張ってもらいます。ここには四つの世界から、様々な方々がいらしています。この封筒に入っている物を駆使して、他の皆さんを消しながら、神のいる場所へ行ってください。そうすればこの世界はあなたの物です。では、これはあなたが読み終わると同時にあなたのマナに反応して、姿を変え、あなたを助けることでしょう。』、ってどういう…」
賢時が読み終わった瞬間、その紙は小さな光になり、そして短剣へと姿を変えた。それは賢時の手のひらに落ちてきた。
「うわっ!痛っ!ったく、マジで訳わかんねえ。」
短剣が触れた部分に血が滲む。その痛みが、これは夢ではない事を物語っている。ゲームや本でしか見たことのないような世界、少し憧れていただけに…
「ちょっと探検してみっか。」
クラスの皆のことを忘れ、さっき読んだ手紙を忘れ、短剣を制服の腰のベルトに挟み、歩き始める。
「まずは、時計台だ!ついでにラクも探してやらないとな!」
未知の世界、その一歩を賢時は踏み出した。
その頃―――
「ふう、大体状況は掴めたな。神の作った世界が四個あって、そこから選ばれた人がここに来て、新しい世界の争奪戦、といったところか。」
こちらもまた緑色の世界に囲まれている。賢時と違うのはそこが草原ではなく、森だということだ。辺りを見回す度に、かけている眼鏡のレンズが鈍く光る。
「とりあえず逆地を探してやらないと。あいつ馬鹿だから絶対に『探検だ!』とか言ってそうだし…。それにしても、この銃は使いやすそうだな。ご親切に説明書までついてるし。後はわからない単語を調べないとな。」
―マナ、DreamWouldか。
「ここから一番近そうな村みたいなのはないかな?」
封筒に一緒に入っていた地図を開く。
「ここは、うん。森みたいだから、この町かな。」
地図に書いてある町。ディマル。
その方角を見ると、僅かだが、時計台のようなものが見えた。
「まずはここからだな。あいつが行くとしたら派手な場所に決まってる。」
銃を一緒に落ちていたカバンにしまい、肩にかける。
「よし!行こう。」
九一は時計台のある方向へ顔を向ける。九一の眼鏡に光の筋が走る。
未知の世界、その一歩を九一は踏み出した。