Part12:それは必然?
「このっ!」
そう言いながらデルタは拳をその男に向かって突き出した。
間一髪、拳は男の耳の辺りを掠める。
顔を覆っていた仮面が半分だけ、ポロリと剥がれ落ちる。
「あれ?」
その顔に見覚えのあるような気がした賢時だが、そんな事を考えている暇は無い。
―最近敵多いな…
賢時はボソリ、とそう思った。
「『stoma』《ストマ》!」
風で象られた剣を構えると、
「俺の仲間に手を出すな。」
横に一閃。
それは丸められた新聞紙のように伸びると、仮面の男の右足にあたる。
宙を舞う木の葉を切り裂くその刃は足を切り裂いた…かのように思えたが、それは穿いていたズボンを掠めただけだった。
「まダマだァ!」
着地した仮面の男はその手に木切れを握って賢時の懐にもぐりこんだ。
「奇泉――『雷来功』!」
仮面の男が振り上げた木切れが賢時の腕を掠める。賢時とは僅かに腕に痺れが走るが、気にせずに風の剣で反撃を行う。
「奇泉――『風来功』!」
その風の剣は風を纏う木切れによって防がれた。
予想外の展開と反撃に賢時はバランスを崩す。
ふらついた右足を狙うかのように、
「奇泉――『雹来功』!」
賢時の足はそこで固まる。
「っデルタァ!」
かろうじで搾り出したその声は仲間に届かない。
上半身だけで振り向いた賢時の目に映ったのは、
「嘘…だろ?」
10人ほどの仮面に囲まれた自分達だった。
「……」
「…」
「………」
「…」
小声で何やら話しているが、賢時の耳には届かない。
ただ、その足にまとわり付く氷をどうしようか、と言う思考で一杯だった。
「ケッテいだ。ケンとき。」
?!、と賢時は振り向く。話しかけてきた仮面の男は今なんと言ったか?
「お前っ…」
するり、と仮面を脱ぎ、顔をあらわにした男は言う。
「久しぶり!」
「…順?」
その時、時は止まったと少年は後に語る。
「順も人が悪いなあ?おい。」
賢時は半分キレ気味に順、と呼ばれた少年の頭を押さえつける。
「いっててて。悪いって言ってるじゃないか?!」
賢時を含む4人と遭遇した集団、その中にクラスメートがいた、とならばまだ分かる話なのだが、逆で、賢時達が遭遇した集団を作ったのがクラスメートたちだった。
「とりあえず、紹介から入ると…」
九一が仕切ってデルタとシータを自分の仲間に紹介した後、
一列に並ぶクラスメートに対し、
「右から紹介して…」
「俺の名前は池谷 司。つかさだからツッチー、とでもよんでくれ。」
やや大柄の少年がハハッ、と笑いながら言った。
「でもって、俺が江藤 雄基。特に呼び名は何でもいい。」
そうやって一人一人、紹介を進めていった。
その間に司から賢時と九一は話を聞いた。
「とりあえず、クラス名簿がここにあるか…らっ!」
鞄から引きずり出した黄色のファイルにはなるほど。
クラス委員である司の機転か。
クラス名簿には安否の確認されたメンバーに印がつけてあった。
「えっと…どれどれ?」
九一と賢時は同時に覗き込む。
クラス名簿(一年二組)
1 熱田 将 ○
2 池谷 司 ○
3 井上 美奈
4 江藤 雄基 ○
5 大久保 憂
6 梶原 知紗 ○
7 小宮 恵那
8 小宮 恵理
9 佐伯 薫
10 逆地賢時 ○
11 清水 百合 ○
12 須田 亮子 ○
13 孫 来
14 田中 正吾 ○
15 月裏 九一 ○
16 手塚 拓人
17 東郷 鈴夏
18 中村 樹理
19 野嶋 賢太
20 沼川 剛 ○
21 花本 真実
22 堀 純友
23 樋口 結奈
24 星川 葵 ○
25 三上 幸義 ○
26 武藤 拓真
27 本橋 大地
28 山中 絵理奈
29 矢野 亜沙美
30 横川 玲奈
31 和田 広也 ○
32 輪野 順 ○
「でも…」
「ああ。そうだ。」
賢時の言わんとしていることが分かったのであろう九一は頷く。
「どうやってこんなに集めたんだ?」
疑問をあらわにした二人がしゃべる。
「くくっ、それはな…」
司はゆっくりと話し始めた。