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Part10:炎と風と

「お前は…何者だ!」

「すぐに分かる。僕と君は同種だからね。」


―どうする?こいつは銃から射出された弾を氷の膜だけでとめた、と言うことは銃で傷つけるのは不可能。だとすれば基本が肉弾戦になるがおそらく体力的にはこちらが圧倒的に不利。

考えろ―考えろ―考えろ―考えろ―考え…―――――――


「何だ。簡単なことじゃないか。」

?、とまたしても男は首をかしげた。その表情にはまだ余裕が残っている。

「銃?肉弾戦?俺は何を考えていたんだ?」


―簡単だ。


「お前の周り、今人の気配は何個ある?」


―こいつをふんじばる。


「気づいたか?」


―サイコ・キラーにも聞くことがある。


「仲間…だよ。」

「なっ…」

「どっせぇぇーーーい!!!」

瞬間、風を纏った拳がアイズの立ち位置に叩き込まれた。

アイズはそれを氷を纏った手で受け止めるが、物理的な衝撃は受け止めれても周りの空気の流れまでは受けきれない。

暴風にさらされたアイズの体は遥か後方に吹っ飛んだ。衝撃を氷で吸収するも、受身を取れなかったその体制ではダメージは少ししか軽減できない。

「がぁっ!」

今まで冷静だったアイズの口からは嗚咽が漏れる。風の刃による2次的な反動で、腹にも傷の様子が見える。

「『千里一望ルー・ムー』」

後ろ向きに背中を地面につけるように倒れていたアイズの頭に柔らかい感触が走った。

アイズはすぐさま前転をして、その感触から逃れようとするが既に遅かった。

「あんたの弱点…見ぃつけたっ!」

前転しつつ、そのまま後ろを向いたアイズの目の先には…

「このデルタの能力…戦闘向きじゃないんだけどっ…」


―消え…


立ち上がって3メートルほど距離をとったアイズの横腹…そこに鈍い衝撃が走る。

「がっ…」

「私は戦闘向きなのよっ!」

彼の立っていた場所のすぐ横、そこには腕をピンと伸ばしきったデルタがいた。

草原を転がるようにしてアイズはまたしても吹っ飛ぶ。半ば、回転気味の体の運動で傷口から血が飛び散るようにもれた。

運が良かったのか、否か。草原の端に行き当たり、その体は転がりながら森の中に消えていった。

ガサガサ、と言う音がした後黄色い塊のようなものが森の入り口に走った。追いかけてきていた賢時とデルタの足が止まる。

瞬間、まるでその2人を足止めするかのように勢いのある炎が入り口に立ち上った。すんでのところで賢時は風を使ってなぎ払う。

だが、その炎はなるで操られているかのような動きで風の拳を避けた。森側にへこむ様に曲がった炎は拳が過ぎ去ると同時に元に戻る。

何度やっても同じだった。

「なんだ?これは…」

賢時は思わず声を漏らす。

「炎…なんだけどねっ!」

デルタも駄目元で炎に触れない距離で拳を打つが、所詮人間の肉体。少しだけ炎が揺らぐだけだった。

「マジでなんなんだよ…」

賢時とデルタはただ立ち尽くすのみだった。











「どうだった?」

サイコ・キラーの入った氷を少しずつ削っているシータと九一の元に2人は帰ってきた。

アルファの死んだ悲しみがまだ抜けないのか、シータの目は真っ赤になっており、デルタも例外ではない。

「見ればわかるだろ?」

賢時は心底うざったそうに言った。肩をすくめるようにして、両の掌を空に向ける。

「まあ炎が見えた時はだめだなあ、とは思った。」

九一は手を休めることなく氷のナイフで氷を削る。

「アルファは?」

賢時はシータに聞いた。聞いてはいけない、と思っていても聞いてしまうのが人間なのだ。

「…ない。」

「は?」

シータの意味不明な答えに賢時は顔をしかめた。

「いない。」

「まあそれはそうだろうけど…」

ドン、という音が走る。シータは手を握って、賢時の腹にその拳を打ち込んでいた。傷口が、傷む。

「いってぇ!何する…」

もとより大怪我だった賢時は目を吊り上げる。レッグからもらった応急的なポーションとやらで手当てをしているため、血こそでていないが、痛いものは痛い。

「消え…ちゃった。」

腹に拳を打つ込んだはずの体は賢時の方向へ倒れこむ。丁度、シータの体を抱くような姿勢。

「アルファが…消えちゃった。」

泣いているのか、顔が見えないが肩を震わせるシータを見て、わけがわからない、と言った風にデルタのほうを見る。

「消えたのよ。切られたはずのアルファの体が。」

デルタは泣いていない。説明、と言った感じで賢時に話した。

九一も目を伏せる。

意味はわかる。

が、賢時にはシータの肩を抱くことはできなかった。












いろいろあったが、とりあえず話をまとめようと言うことで一向はルバニに戻った。

宿屋の一室で4人は話し合う。

「えっと…話をまとめるとだな。」

九一はメモ帳を見ながら、箇条書きの状況を話した。




1:デルタ達の他の仲間である残りの7人のうち、1人死亡、4人行方不明、で2人がとある町で待機。


2:4日前に開かれた(賢時一行の到着3日前)世界一の酒豪を決めるルバニの恒例の大会に、無名の女性が参加、優勝賞金の100万N(ひゃくまんノバール)を鞄に、商品の酒1年分を荷車に積んで、去っていったということ。(絶対に先生と確定事項。)


3:とりあえずサイコ・キラーの捕獲(死んでいた)により、礼金が出たため、これからの旅に支障は無いだろうということ。




「で、仲間になるかって話だけど…」

シータはまだ話せる状態ではないため、デルタが代わりに話す。

「むしろ仲間になれ?って言うか?」

確かに女の子(?)2人の旅は危ない、と思うが自分たちは仲間の捜索を一番にしなければならない。

「先生はイルトラノム…この国から出て行くためにここから北のリバルストって言う国に向かったらしいんだけど…」

九一は世界地図を開きながら言う。

元の地球の北海道に当たる部分にイルトラノムと書いてあり、その北にはユーラシア大陸ほどの大きな大陸が広がっている。陸続きなのか否か、地図では確認できないほどに近い。

「なら大丈夫よ。私達の仲間…待機中のやつらはリバルストの『ババラン』にいるから。」

デルタの指が地図上を走り、リバルストの国の東端の出っ張った部分でとまる。元の地球で言う『朝鮮半島』の部分だ。

「だったら…なあ?」

賢時は前にいる九一の肩を叩く。

「ああ。」

3人は打ち合わせることもなく拳を握り、机の上にかち合わせる。

「シータ。」

デルタは呼ぶ。

恐る恐る、と言った様子でシータもゆるく握った拳を机の上にだした。

「「「目指すはババラン!!!」」」


その日の宿は夜中まで明かりがついていたとか。


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