File 4.事件の真相
二人が家路を歩いていると、女性が倒れていた。
裕一は女性の息を確認したが、しかし、女性は既に事切れていた。
「遥、110番して」
「うん」
遥が携帯を取り出す。
裕一は遺体を調べた。
女性は免許証の記載によると、名は工藤 美代子。年齢は三十五。死因は腹部を刺されたことによる失血死である。
凶器は遺体のそばに落ちている血のついた果物ナイフで間違いなさそうだ。
裕一が現場を調べ終えると、同時にパトカーが到着した。
覆面パトカーから恵子が出て来る。
「また君が第一発見者?」
「ええ。それはそうと──」
裕一は被害者の身元と死因を報告した。
「そう、ありがとう。死亡推定時刻は……分からないよね」
「死後硬直の具合から見て、昨晩の十一時ごろではないかと」
「どうもありがとう」
恵子が遺体に向かって合掌をした。
「三島さん、今回はお一人ですか?」
「部下たちは昨日の事件の捜査に行ってるわ」
「三島さん、被害者宅の固定電話の通話記録を調べていただけませんか?」
(このタイミングでの殺人……もしかしたら昨日の事件と何か関係があるのかも)
「分かったわ」
恵子はNTT東日本へと向かって行った。
「裕一くん、どうして固定電話なんか調べるの?」
「昨日の事件と繋がりがあると思ったからだよ。さて……」
裕一は付近で聞き込み捜査を開始した。
恵子は電話会社NTTに来ていた。
手元には工藤 美代子宅にある電話の通話記録が。
そこには見覚えのある電話番号が記載されていた。殺された斉藤 琢磨の連絡先だ。
恵子は携帯を取り出して裕一に電話をした。
「はい、河野です」
「河野くん、面白いことが分かったわ」
「斉藤さんが殺害された日の夜の時間帯に斉藤さん宅の電話番号が記載されていたんですね?」
「え、どうして!?」
「工藤さんのことで周辺で聞き込みをしていたら、工藤さんが亡くなった時刻に、琢磨を返して、そう工藤さんに怒鳴りつける女を目撃した方が現れたんですよ。暗くて顔までは確認出来なかったそうですが。……これは僕の推理ですが、斉藤 琢磨は工藤 美代子に殺害されたのではないでしょうか。そして、工藤 美代子もまた何者かに殺害された……」
「犯人の目星はついてるの?」
「ええ。恐らく、彼女しかいないでしょう。僕は今から彼女に会いに行きます」
「ちょっと待って! 危険な行動はしないって約束でしょ!?」
ブツッ!──電話が切れる。
影山家。
ピンポン、とチャイムを鳴らす裕一。
中から影山 洋子が出て来た。
「どちら様?」
「工藤さんをご存知ですか?」
「そんな女知りません。その人がどうかしたんですか?」
「昨晩遅くに、何者かに殺害されました」
「それで、私に何の関係が?」
「貴方、どうして工藤さんが女性だとお分かりに?」
「え? あ、それは……」
「工藤 美代子さん、貴方が殺害した女性です」
「なっ……証拠はあるの!? 私がその人に琢磨を殺された仕返しにその人を殺害したという証拠は!?」
「やはり、斉藤さんは工藤さんに殺害されたのですか」
「!?」
「影山さん、実を言いますと、工藤さんが亡くなった時刻、貴方は近所の人に目撃されているんですよ」
「ど、どうして私が犯人だって?」
「貴方は斉藤さんの婚約者です。斉藤さんを殺害したという理由で工藤さんを殺害する動機があります」
影山は懐からナイフを取り出した。
「全部知られたからには生きては帰さないわよ!」
発狂した影山がナイフで裕一に襲いかかる。
裕一はナイフを蹴り飛ばした。
その時、覆面パトカーがサイレンを鳴らしながらやってきた。
「河野くん!」
「三島さん!」
影山はその場に崩れた。
「影山 洋子さん、貴方を殺人罪で逮捕します」
恵子が影山に手錠をかけ、パトカーに乗せて警視庁まで連行した。
裕一は後日、警視庁に招待され、事情聴取を受けたという。