File 2.取調室
事件現場周辺。
裕一は聞き込みを行っていた。が、しかし、有力な情報は何一つ得られず。
一方で、警察は被害者の交友関係を洗っていた。
警察の捜査で、三人の容疑者が浮上している。
連絡をもらった裕一は、警視庁へとやってきた。
捜査一課の取調室に隣接する部屋に入り、窓越しに取調室の様子を見る。
「では、貴方は事件の遭った夜は北海道にいたというんですね?」
今取り調べを受けているのは、吾妻 聡子という三十五歳の大学生だ。
吾妻の話では、被害者とは高校時代のクラスメイトで、人から恨まれるようなことはなく、寧ろ好かれるタイプであるということだ。
また、金銭トラブルも特にないと言う。
「三島さん、被害者の名前教えて欲しいんですけど」
「ああ、忘れてたわ。被害者は斉藤 琢磨、三十五歳。帝国保安保障の社員よ。死亡推定時刻は昨夜の十一時前後で、死因は腹部を刺されたことによるショック死ね」
裕一は取調室の方に向き直った。
現在、取調室には阿笠 皐月という二人目の女性が入っている。
阿笠の話では、斉藤は女癖が悪く、本命がいるのにも拘らず、数人の女性と浮気をしていたという。
そして、阿笠は退室し、影山 洋子という女性が入ってくる。彼女は斉藤の婚約者だという。
影山の話では、斉藤は事件当夜に誰かと会う約束をしていたという。
「分かりました。では、後日また改めてお話をお伺いするかもしれません。では、どうぞお帰り下さい」
刑事がそう言い、影山は取調室を出て行った。
因に、取り調べを受けた三人にアリバイはない。
裕一は恵子と共に部屋を出た。
「三島さん、今後はどういう捜査をするつもりですか?」
「取り敢えず、害者の事件前の足取りを追おうかと」
「そうですか。では僕はいったん帰ります。何か分かったら電話下さい。それじゃ」
裕一はそう言うと、警視庁を後にして帰路に就いた。