File 1.事件発生!
その日、河野 裕一は殺人事件の現場にいた。
目の前には、腹部にナイフが刺さった男性の遺体が横たわっている。
時刻は午後四時を回っている。
「何だこれ!?」
裕一は懐から携帯電話を取り出し、警察に通報をした。
やがて警察が到着し、現場検証が始まる。
現場検証後、若い女性刑事が裕一に声をかけた。
「貴方が第一発見者?」
「ええ、そうです」
黒の長髪で端正な顔立ちをした彼女の名は、三島 恵子。階級は警部だ。
「警視庁捜査一課の三島よ」
恵子は裕一に警察手帳を見せる。
「早速だけど、発見時の状況を聞かせてくれる?」
「それは帰宅途中のことでした。見たい番組があって、家路を急いでると、路地裏で人が横たわっているのが見えたんです。で、何かと思って近づいてみると、その体にはナイフが刺さっていて、死んでいました」
「なるほど……。何か不審なものを見たり、聞いたりしたことは?」
「いいえ、ないです」
「そうですか……。お名前聞かせてくれる?」
「河野 裕一です」
(河野? 刑事局長と同じね……)
「それより、この事件って他殺ですよね?」
「どうしてそう思うの?」
「遺体の周辺を見て下さい。辺りに一滴も血が飛び散っていません。となると、被害者は別の場所で殺害されてここへ運ばれて来た。そう考えるのが妥当ではないでしょうか?」
「やけに事件に詳しいわね。ちょっと署まで来てもらえる?」
「え?」
「同行してちょうだい」
裕一は恵子に警視庁の応接室に連れて行かれた。
「ずばり聞くわよ。貴方、この事件について何か知ってるんじゃない? 例えば……、貴方が殺害したとか?」
そこへ部下がやってきた。
「三島警部、河野くんのお父様に連絡が取れました」
「ちょっと待ってて」
恵子は部下と共に捜査一課の一室へと行き電話に出た。
「河野 裕一くんのお父様。先ほど、息子さんが殺人事件の現場に居合わせたので、署まで同行してもらいました」
「……そう」
「因に、お父様はどんな仕事を?」
「河野 総一と言えば分かると思うけど……」
「河野 総一さん? ご職業は?」
「警察庁です」
「警察庁? 階級は?」
「刑事局長ですが?」
「刑事局長? あのね、刑事局長は河野 総一さんと言って……河野 総一?……って、え!?」
「刑事局長です」
「失礼致しました! すぐに息子さんを解放します! 失礼します!」
恵子は受話器を置いた。
「朝輪くん、お茶の用意を!」
「は、はい!」
恵子は裕一の下へ戻った。
「裕一くん、河野刑事局長の息子さんなんですってね」
「ええ、まあ……」
恵子の部下がお茶を持ってくる。
「ごめんね、何か、容疑者扱いしちゃって」
「いえいえ。それより、俺にもお手伝いさせてもらえませんか?」
「お手伝い?」
「事件の捜査に協力させて欲しいんです。お願いします」
裕一は頭を下げた。
「あ、頭をあげて!」
裕一は頭をあげた。
「捜査協力はありがたいけど、危険な真似はしないでね」
「分かってます。ていうか、帰ってもいいですよね?」
「もちろん。気をつけてね」
恵子は裕一を見送った。