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第49話 クラウディア・ロジャー

「……名前は『クラウディア・ロジャー』、33歳の冒険者で魔法使い。家族は私に似て聡明な娘が1人、首都タナトスで二人で暮らしてるわ、好きな物は薔薇、身長約130㎝、体重は秘密、スリーサイズは……聞いても面白くないわよ」

「わぁすごい、聞いてない情報まですらすら喋ってくれたせいで、なんか一気にいかがわしい感じになっちゃったぞぉ」


 牛が引く荷車に揺られながら、私とテスはこの『クラウディア』なる兎の獣人に色々と質問をしようとしていた。


 ちなみに聞いたのはまだ名前だけ、それ以外は全く、一言も聞いてはいない。


「それで、クラウディアさんは何故あのような場所で身動きが取れないような状態に?」

「好きであんなことしてた訳じゃないわ。この辺りに貴重な植物が自生してるから、その採取に来たの。根が長ければ長いほど価値が高いのだけれど……」

「持ってない、ということはハズレだったんだな」


 クラウディアが頷き、肯定する。


 このクラウディア、どうやら元々感情を表に出さないのか、とにかく表情に変化がなく、語り口も淡々として静か、そんな調子でたまに誤解を生みかねない言い方をすることもあり、ぶっちゃけどう扱えばいいのか分からないややこしい奴という印象を持った。


「先ほど自身を魔法使いと言いましたが、なるほど。身動きは取れないけれど使い魔でも飛ばしていたのでしょう、ララァ様だけでなく、私と牛車の存在も認識していたのですね」


 テスの推測に、私の中の違和感の正体が明らかになる。

 その通りだ、私がクラウディアを引っ張り出した後、こいつはさも当然のようにテスと牛車の事を知っていた。


 テスの言葉に当のクラウディアはまた、肯定の頷きをしたのだった。


「近くに人が通ればと使い魔を出していたけれど、使い魔で誘導するより先に偶然、貴方が私を見つけてくれたのよ」

「そうか、それは良かったが……、もし誰も通らなかったらどうするつもりだったんだ?」

「その時は仕方ないわ、多少の被害は被っても魔法で小爆発でも起こせば穴を広げることくらいは可能なはずよ」

「良かったですね、運良く見つかって」

「うん」


 渡した水を飲み、クラウディアは一息つく。


「残念ながら探していた物は見つからなかったわ、次の町で首都に向かう馬車を探して、家に帰ろうと思う」

「そうだな、今なら街道も普通に使えるから行商人など見つかるだろう」

「今なら……? まるで最近まで使えなかったみたいな言い方ね」

「ええ、実は……」


 次の町までの話のネタとして、私達は先のゴブリン退治の話を始める。


 と言ってもやったことと言えば隠れて狙撃、だけなのだが魔法を使うクラウディアにとっては銃器の話は興味があるらしい。

 かく言う私も、テスが傍に居ながら銃は普段から触れる機会がないから興味はある。


 ただ、銃の話と同じくらいにゴブリンの話に対して関心を持っていることに、私とテスは少し不思議に感じていた。


「ゴブリン……そう、最近は魔物が活性化していると聞いていたけれど、魔族と魔物、似て非なる存在という事もあって、今も不明点が多いのよね」

「一般的な定義として、魔物は人族領で生まれた『理性のない魔族』の事ですが、理性がない故に、同種の魔族に対しても攻撃的だとかで、人族にとっても魔族にとっても、脅威的な存在、と言われてますね」

「人族領の各地で魔物の被害が多数報告されているわ、貴方達にも、いずれ大規模な作戦で声がかかるかも知れないわね」

「冒険者を駆り出す程に切迫した状況なのか? 人族にも大小合わせてもそれなりに国があって、軍備もしてるだろう?」

「軍は勿論どこの国にもあるわ、でも軍が対応するのは自国の周りの問題だけ、国境とか、国が軽視するような小さな村までには手を回さないのよ」


 クラウディアは何処か呆れたように小さく、溜息を吐いた。

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