第13話 200年経っていたらしい
ミナトの町から離れ、私達は沢山の冒険をした。
時に苦難に心折られそうになり、歩みを止めてしまうこともあった、それでも、私の隣にはテスがいつも居た、改めて知ったテスの気持ちに距離感を掴めず、時にすれ違いに悩まされた。
だがそれらの障害を乗り越え、ついに今日私はテスと……。
……なんてことは一切なく、あれから何事もなく、こうして私達は馬車に揺られながら山越えをしている所だ。
思い返すこと昨日のことだ。
ミナトの町から北に道なりに進めば1週間あれば辿り着く計算だったが、そこはあの子供向けの地図、まさかミナトの町と首都の間に、数多くの魔獣が住む広大な森が広がっているとは想定外だった。
そして更に想定外だったのが、その森がギルドが定める『プラチナ級』以上の冒険者のみ入れる地域として指定されていたことだ。
森に入って魔獣を倒しながら横断すること自体は問題はない、だがもしギルド関係者に見つかりでもしたら、私達が冒険者になる上で不利益が出るなら避けたい……と、テスと相談した結果が、迂回するという方法だ。
「しかし運良く馬車に乗れたとはいえ、山越え含めて1週間ちょっとの道程は中々退屈かも知れんな」
「でもこの退屈も旅の醍醐味ですから」
「それは確かにそうだな……昔が便利過ぎたんだ」
昔は良かった、と懐古する。
タナトスとゼルノアによる『神の戦い』より以前、世界は今より遥かに高度な技術で発展していた。
『魔力と水で動く蒸気機関』、『浮遊魔法を取り入れた飛空艇』、『魔力の弾を打ち出す主砲のある鉄製の船』……。
それら全ては機人族が、機人族のみで生み出された発明である。
そのほかに『銃』と言う火薬で鉛玉を撃ちだす武器が現在もそれなりの数が出回っているが、単発式で、威力はあるが精度が良いとは言えず、一般的に『玄人向け』と定義、認識されている武器だ。
それに比べ、機人族が持つ銃はより性能が良い物だ、マガジンという弾倉を備え、連射も効く物さえある。
人族や魔族が、今もなお決して機人族と争わないのはその背景があるからだ。
ただそれらの技術、発明の大半は『神の戦い』の時に失われ、今は機人族領でのみ、見る事ができるようになっている。
……それを知ったのも、昨日の話だった……。
遡ること大体24時間前。
「馬車で行きましょう、山越えするには徒歩は大変ですから」
「本当に……もう船も飛空艇も列車もないんだな……」
「そうです。受け入れがたい現実かも知れませんが、人族も魔族も、過去の戦いで受けた傷を癒しきれていません」
「そうか、そんな状態で機人族が技術で介入しても使いきれないか、はたまた種族間の争いで使われる……か」
「そういうことですね」
しかし、私が居なかった数年間、それほどまでに戦いの傷は深く、人々はまだ立ち直れずに居たのか。
「貴方が居なくなり、そして戻って来たこの200年の間、不便ではありますが、人々はちゃんと適応できてます。機人族として、彼らの生きることに対する強さはとても興味深いです」
……200年?
「200……えっ?」
「何を驚いてるんですか、きっかり200年ですよ。……もしかして何年も同じ空間に居た所為で時間の感覚を忘れ、過去話とか全部『今から数百年前』とか言って誤魔化してました?」
「まるで私の頭の中全て知り尽くしてるような事言うよな、お前な」
そんで、それはそれで問題だろ、テスは適応できていると言った、しかし200年だぞ。
200年もあれば残骸を回収して直して、全盛期ほどではなくとも使えるくらいにはできるはずだろう?
「流石に全ての発明が粉微塵になってるわけではないはずだ、列車の残骸はどうなったんだ」
「人々が分解し、鉄屑などは溶かして農具などに作り替えられてます」
「飛空艇は……」
「全て墜落し、原型のあるものはその大きさから、魔物が良い感じに巣として使っています」
「大型船は!?」
「大半が沈み、座礁した船には多くの人が住み着き、町になってます」
「……機人族から見てちゃんと適応できてると思うか?」
「……願わくば、人々の技術発展につながる形で適応してほしいですね」
人は努力次第でどんな環境にも適応してきた、それは歴史が証明している。
……だが、まぁ、この調子なら昔の高度な技術を取り戻すまでに、まだまだ途方もない年月が必要になるだろう、そう私は思った。
「この調子なら、弓やボウガンや馬車も牛車も、まだまだ現役だな」
「……『不便』も人の営みの醍醐味ですから」
テスのそれってフォローになっているのだろうか。




