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 港に二隻の帆船が碇泊していた。案内船と貨物船で、それぞれ同じ構造で、十本ほどの帆柱が立っている。潮の流れの上でも、その巨体は微動だにせず、堅牢である。


 空は曇っており、空気はジメッとしていた。


 貨物船の甲板の縁から、丸襟の上下一体型の服を着た二人の若い男が、人足たちがせっせと荷下ろしする様を見るともなしに見ていた。一人は目が閉じているように見えるほど細く、片手を手摺に置いていて、別の方は、ニキビの多い顔で、手すりの上に腕組みしている。彼等は船員だった。


 船に積載された箱を次々と、たくましい筋骨の人足たちが額に汗して、船と港を繋ぐ階段を上り下りして運び、岸にある牛車の荷台にのせていく。


「あの箱には何が入ってるんだろうな」、と目の細い方が聞く。


「さぁな」、とニキビ面の方が返す。「おれたちは商人じゃなく、ただの船員で、荷物の内容なんて把握してなくていいんだ」


「それは、そうだ」


 目の細い方は、その目を更に細めて遠くを望んだ。港町の更に内陸の方には、山々が並んでいる。


「ひょっとすると、あの山の方まで運ばれるのかも知れない」


 手すりの手を上げて彼方を指差し、彼が口にする。


「どうしてそう思う?」、とニキビ面が彼の方に振り向いて聞く。


 目の細い方は手を手すりに戻すと、「勘だ」、と答えた。


 ニキビ面は正面に向き直り、呆れたように軽くため息した後、指差された山の方面に目を遣り、箱の行方より、この曇天の空模様がどう推移するのかが気になった。


「雲行きが怪しい。天気が悪化して海が荒れないといいが」、と彼は呟く。


 目の細い方も、同じ方を眺め、その後「大丈夫だろう」、と答えた。



「それも、勘か?」、と彼は問われたが、やはり頷いて返すのだった。




 数台の牛車のそばに、緑色の服の商人が腰に手をやって傲然と立っており、荷下ろしの様子を注視、ないしは監視しているようだった。




 全ての箱が牛車の荷台に積まれた後、くたびれてぐったりした人足が一人、商人の方に歩み寄り、銭が入っているらしい袋を手渡した。商人は受け取り、袋の口を開け、中を覗き込み、手でジャラジャラ漁ると、納得したように腰に下げた。




 人足たちは、牛車の両脇に並んで轅に手を置き、牛に指示を出してゆっくり進みだした。まずは牛を方向転換させ、そして歩かせた。その足取りは、成るほど力強くなくはなかったが、見ている者が眠くなるほど鈍かった。




 目の細い方の勘は、的中していた。


 荷物満載の牛車数台は、これより港町を出、彼等がそこより来た、何阿蘭の邸宅のある村まで向かうのである。港町の外、すぐそばには、牛車の護衛の騎兵が数人待機している。


 牛車に積載された荷箱の中身は、政府お抱えの職人が製造した種々の最新武具、火器、そして火器の作動に必要となる火薬だったのである。


 この物資は、この先阿蘭の手に渡り、その後、彼が懇ろにしている相手に納入されることになっているのであった。




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