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 灰色の空から、無数の雨粒が降り注いでいた。


 その日の天気は雨模様だった。憑円と旭光と仲間たちは、宿の表に立ち、通りの風景をぼんやり見ていた。朝のことだった。憑円の頭には、昨夜見た夢の記憶がまだ鮮やかだった。


 地面は濡れ、通りでは、雨天でもやるべきことのある人々が、雨に打たれながら行き来している。


「あいにくの天気ですが、今日はどうされますか?」


 仲間が旭光に聞く。


 旭光は考えるように唸ると、「仕方ない。もう一泊することにしよう」、と答えた。「考える時間を与えられたとするなら、これは恵みの雨と言える」


 旭光は半歩ほど通りに出、手のひらを宙に差し出し、そこに雨を受けた。彼の手のひらに、雨粒がパッ、パッと弾け、極小の粒子となって散った。




 ……。




 火器に火が灯され、ポッとその周辺が明るくなる。


 一時的に、皆、憑円と旭光の部屋に集まり、話し合いの場を持った。議題はこれからどうするかというものだった。旭光は上座に当たる位置に椅子を置いて座り、他は彼を敬う形式で、隙間を置いて並ぶ二つの寝台に座った。


「都に帰る。最初はそのように考えていた」、と旭光。「赴任先の情勢が、当初そうなるべきだったものとは違うものになった。想定外が起きたということだ。このことを高官まで報告しに行かなくてはなるまい」


 仲間たちはその通りだという風に相槌を打ったが、憑円はポカンとして、ただの傍聴人然としていた。


「だが、気になることがある」、と旭光が続ける。「阿蘭という男の武器の入手経路だ」


「武器の製造は中央に管理されております」、と仲間。


「どういう意向が阿蘭まで伝わっているのか、ぜひ知りたい。あるいは世が穏やかに治まることを望まない者が、中央に潜んでいるのやも知れん」


 旭光のその言葉に、憑円を除く一同は顔を険しくし、憂わしさを覚えたようだった。憑円だけは、まだはっきりと事情が推察出来ず、間の悪さを感じていた。


「ヤツは私兵を率いているようでした。我々の仲間が一人、()られてしまいました」


「あの蛮行を許すことは出来ません。ヤツは武器が専売制であることを乱用しています」


 仲間たちが次々と憎悪の言葉を吐く。


「とにかく金に目がない連中ばかりだったことは鮮明に覚えている」、と旭光。「あの阿蘭という男は、貧民たちの反感を上手に利用しているようだ。我々は決して身分を明かさなかったが、どうやら見抜かれていたらしい」


 仲間の一人が、「クソ」と悪態を吐いて寝台に拳を打ち付ける。その音に、憑円は、内心威圧されてしまった。


「この町には幸い大勢の者がいる」と旭光は特に気に留めず、続ける。「人が多くいればいるほど、それだけ情報があるということ。宿駅だから、外部の者も紛れていよう。この辺で武器の取引が行われているかどうか、ちょっと聞いて回ってみようではないか」




 雨はしたたかに降り続いていて、その音が、宿の室内まで届いていて、また、空気の感触がジメッとしていた。


 だが、西方の空は、東方の空に比べて明るかった。あるいはこの雨は、案外早く弱まるか、止むかするかも知れない。




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