第9章 新曲の披露
新曲披露の為、各自メンバーは常磐線で上京した。龍二はトランペットを背中に背負っていた。電車の中で女子から話かけられる回数が増え始めていた。そのたびに握手をしサインを求められた。今日は事務所に着くまで約30人のファンに遭遇した。人気者になた事を実感していた。備忘録にはこんな細かな事まで書いてあった。自分の几帳面さに読んでいて相槌をうった。あの頃の記憶がよみがえってくる。事務所に着くとメンバー全員が揃っていた、昨日渡した楽譜を見て音出しをしていた。練習室に社長と吉野マネージャーと重盛マネージャーや役員、プロデューサーもいた。「皆、ご苦労さま。俺がラストになっちゃたな!ごめんなさい。通して1回合わせみっか?」龍二が皆の顔を見て微笑んだ。「オッケー!」美優が言うとキーボードをポロンと鳴らし曲でキーボードとドラムの長めの前奏で始まった。翔平のボーカルが始まるとギター、ベースの音が重なり心地よいリズムで曲がすすむ。途中で龍二トランペットと玲奈のサックスが入ってきて曲がカタチになった。翔平のボーカルはすこぶる良かった。途中で皆コーラスを入れてボーカルに乗っかった。間奏で瑠奈のギターソロが入って、ボーカルとコーラスが一体になって、最後は玲奈のアルトサックスのアドリブソロで曲が終わる。素敵なバラードに仕上がった。プロデューサーが直しなしですぐにレコーディングしたいと言い出し。全員レコーディングルームへ移動となって、一発オッケーでレコーディングを終えた【君への贈り物】が完成した。発売日は夏のつくばでのコンサート前に決まった。レコーディング後、全員会議室に呼ばれた。例の写真集が出来上がっていた。各自自分の写真集を見て女子達は恥ずかしいと嘆いていた。男子達は全員ナルシストなので良い出来上がりだと称賛した。玲奈が見て「龍二カッコいいよ。売れるよ。」玲奈が言った。美優も見て「カッコいい!間違いない。」笑顔で太鼓判を押した。龍二は玲奈と美優の写真集を見て「これ修正入っているな?特に胸の部分。でも可愛い!アハハ!」龍二は少し茶化したが本当に二人は可愛いかった。「なんか、失礼しちゃうわね。あごのラインも修正入っているわよ。わからなかった?」玲奈が龍二の顔を見て、メンバー全員の写真集が廻って来た。「瑠奈ちゃん良いね。若さが良く出てる。裕太はもう少し身体鍛えた方が良いかな!翔平はマダムからモテそうだな。「瑠奈と恵子も水着良いね。」と二人の全身を眺めた。皆、良い記念になったな!」龍二は偉そうに一人一人を批評した。リーダーの特権であった。一カ月後、販売実績に皆が驚いた。一番売れた写真集は龍二の物であった。2番目は翔平の写真集続いて、玲奈、美優、瑠奈、恵子、裕太で予想を超えた部数が売れた。社長も喜んでいた。うちのモデルより売れたとビックリしていた。初動売り上げ1位から7位までを独占した。最終的には全員5000部以上売れたヒット作になった。社長は全員にお寿司を御馳走してくれた。回らないやつ。お寿司を食べていた時、玲奈が「今晩、作曲付き合ってくれない?」龍二に頼んで来た。練習スタジオで二人は楽器を演奏しながら作曲をした。玲奈が書いた詩のタイトルは【夏の匂い】龍二と18歳の頃、千葉の九十九里浜の波乗りロードをスカイラインケンメリで走った思い出の歌であった。龍二もあの日の風の匂いは今でも覚えていた。あの頃、カーステレオから聞こえた曲はオフコースであった。




