プロローグ
僕の名前は佐伯陽汰。
北海道にある、至って普通の高校に通うはずだった中学生。
性別は男で身長は160と少し。体重は非公開としよう。
好きな食べ物は米、たくあん、焼き鮭。
嫌いな食べ物は魚介類全般。
マイナースポーツのアイスホッケーを嗜んでる程度。
陰キャ寄りの性格ではある。たぶんね。
自己紹介はざっとこんなかんじ。
確かあれは冬の話だったかな。思い出してみることにするとしよう。
冬休みが明けて、そろそろ受験に本腰を入れないといけない雰囲気が教室内に漂っていた。
「ランクが〜」
「倍率が〜」
「今日放課後暇?」「ごめん、塾〜」
「お前ら大変だな、俺もう受かってるから〜」
こんな会話が耳に入り込んでくる。
ランクや倍率という単語は塾に通い詰めて人間関係などを断ち切るかのごとく勉強に時間を費やす人たちが冬休み前から使って話していたが、平然と学校生活を過ごしている人たちからもそんな言葉を聞くようになった。
自分も頑張らないといけないと焦りだしそうになる。
しかし無理に頑張ることで自分を失うのが怖かったし、ストレスから来る持病のことも考えると焦りは薄れていった。流石に、1日1時間は勉強しようかな。ゲームは1日1時間、勉強も1日1時間。よいではないか。
でもやる気はないのだからやらなくて良いとおもった。
時刻は只今15時35分。あと数秒でチャイムが鳴る。
帰宅したら読書して、スマホ見て、ご飯食べて、風呂入って、寝よう。
聞き慣れているチャイムの音が聞こえたその瞬間、足元に魔法陣らしき紫色の光がまばゆく輝く。
突然の出来事にクラスの人々は混乱を隠せていない。
「なんだ、これ」「何が起きてるの」
便乗して自分も声を出してみる。「」出なかった。喉を潤すため、心を落ち着かせるために水筒を取る。そういえば水筒空じゃん。喉かわいた。呑気してる場合じゃねぇよ。はいはいセルフツッコミお疲れ様。
オタクグループは「テンプレ展開ktkr!!」「エンハンスアーマメントとかできるんかなぁ」「邪剣・夜…使いましょうね」夢にまで見た光景に興奮を隠せていない様子。よかったね、うん。
瞬き。
黒い空間。
まるでドラ◯もんのタイムマシンに乗っているかのように、上下左右前後の壁が後ろに流れていく。
握っていた掌の力が抜ける、耳にヘッドホンをつけているかのように音が聞こえない。独特の匂いも、季節の匂いもしない。終いに、見えている光景も、なくなった。
記憶はそのまま、脳はそのまま、魂と肉体もそのまま。
僕は眠りについた。
夢かもしれないと疑う。
異世界の生活ってどんなものになるんだろう。
次から本編です。