#ff0000-火赤
↹↹↹↹↹599年3月27日午後21時00分↹↹↹↹↹↹
「ほらよ、、、すげぇ食うんだな、嬢ちゃん、、、俺は暫く席を外すから———何だったか、、、あぁそうだ、後はお若いお二人で、だっけか?」
「ルドガーさん、、、それじゃ意味合いが違いますよ、、、」
「細けぇ事は気にすんなよ、、、まぁしばらく二人で話しとけ。俺はこれ吸ってくるからよ」
ポケットから薬を取り出し、外に出る。
相変わらず薄い空気と、肌を刺すような冷たい気温に体の芯が震える。
それでも薬を袋から取り出し飲む。
「先生」
「お前は―――あぁ、アドルフか。久しいな」
「もう二十年も会っていないのによくわかりましたね、先生」
「分かるさ。大切な教え子の事くらいは―――こんな薬やっててもな」
少しショックを受けたような、或いは悲しそうな瞳でこちらを見てくる元教え子を見ると―――自分の生き方が歪んでいることを自覚する。
「そんな目で人を見るもんじゃないぜ?アドルフ、、、お前はまだ仕事してんのか?」
「えぇ、、、と言っても第一線からは退きまして―――今は学長を務めています」
「ほぅ、、、偉くなったな、アドルフ―――それで?なんでこんなところに来たんだ?」
「あのホムンクルス―――エルさん、と言いましたか?」
「―――!」
何故こいつはエルがホムンクルスであることを知っている?
真逆こいつの目的は―――
「別にエルさんを奴隷にしようなんて事は思っていませんから、、、そんな目でこちらを見ないで下さい。怖いです」
「、、、すまなかったな」
「我々はエルさんの類稀なるその才能を、我が大学で活かして欲しいと思っているのです―――まぁ、要は教鞭を執ってほしいわけです」
「、、、三つ、条件がある」
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制服の袖に腕を通し、『マステマ魔術専門大学』と書かれた門をくぐると、妙齢の男性が立っていた。
「お待ちしておりましたよ、エルさん」
「、、、貴方は?」
「この大学の学長、、、この依頼の依頼主です。これから依頼内容の説明をさせていただきます―――歩きながらでよろしいですか?」
「大丈夫です」
そう受け答えしながら周りを見渡すと、生徒たちが目に入った。
人間の子供と獣人の子供がつるんでいる。
案外この学校には獣人への差別意識が無いらしい。
「それでは説明させていただきます」
「、、、お願いします」
「今回我々が貴方に依頼するのは、教職任務です。具体的に説明いたしますと、この学校における最優秀生徒達のクラス―――通称S組の担任になっていただき、そこで魔術を指導していただきたいのです」
「成る程、、、わかりました」
「というわけで、、、まずこちらをお渡しいたします」
そう言うと学長はカードと名札入れをポケットから取り出し、こちらに渡す。
「それは職員証、、、この学校に出入りするために必要な物です。紛失しないようにお気をつけて下さい」
「了解しました」
「それから、、、これも渡しておきます」
そう言ってもう一度ポケット、、、今度は胸ポケットに手を入れ、勲章のような物を取り出し、こちらに渡す。
「これは?」
「これは、、、この自治区の貴族勲章です。これを持っていれば様々な優遇処置を受けられます―――この自治区における貴族の意味をご存知でしょうか」
「いえ、、、全く、、、というかこんなもの俺が貰って大丈夫なんでしょうか」
俺の問いかけに少々微笑みながら、答え始める。
「全く問題有りませんよ。エルさんにはその資格がありますから―――この自治区における貴族とは謂わば『力』の象徴です。もしもそれを持ったものが反乱を起こした場合、自治区が滅びる様な―――そんな方が貴族になります」
「俺にそれだけの力があると?」
「はい」
この自治区の連中は、どうやら随分と弱いらしかった。
「おっと、着きました―――ここがS組です。導入は済ませておきましたので、、、後はよろしくお願いします」
「了解しました―――」
名札入れに教員証を入れ、勲章を制服に留め―――
軽くドアをノックし、開けた。