白夜
毎週日曜日21時投稿予定です。
末永くよろしくお願いします。
スラムは腐っている。
物理的にも、精神的にも腐っているのだ。
常に死体の腐った臭いが漂っているし、それと同時に笑い声と嬌声、、、悲鳴と捨てられた娼婦のすすり泣く声が響いている。
前者はドラッグが広まっている事を示しているし、後者は風紀の乱れと犯罪率の高さを表している。
それでも獣人達はこの場所を故郷よりマシだ、と言うのはこの世界の差別意識が彼らに向けられる為だろう。
尤も、ここでは人間が何よりも差別されるのだが。
いつも通りの視線を感じながら、フードを目が隠れるくらい深くかぶる。
この場所は普通の人間にとっては最悪の場所といえる。
人間に対して強い殺意と敵意を持った獣人達が、襲いかかってくるのだから。
「おい、そこのニンゲン、、、ここが何処だかわかってんのか?」
体格の良い狼族の男が話しかけてきた。
「スラム、、、で合ってるか?」
「そうだ。ここでは人間を殺しても罰に問われねぇんだ———」
「逆に人間が獣人を殺しても罪に問われないのは知ってるか———犬っころ」
「おめぇ、、、」
男がこちらに詰め寄ってくる。
ここにおいてそれは戦いの始まりを意味している。
「———Θα παίξουμε κάτω από τα πτώματα ή πάνω από τους αγγέλους;———」
手元に真っ赤な銃が現れる。
ためらうこと無く引き金を引くと、路地に真っ赤な花が咲いた。
▼△▼△▼△▼△▼
狼族の死体を蹴って道の端に寄せつつ、その場を去ろうとしたが―――路地を構成する建物の隙間から、微かな声が聞こえた。
「———けて」
それは、助けを求める声だった。
急いで声のもとに向かうと、少女を嬲る男の姿があった。
「助けて、だぁ?人間共が俺たちにしたことに比べれば生温いだろ?」
「へぇ、、、お前は何をされたんだ?」
「俺は、、、そんなんどうでもいいだろ」
まだ手元に残っていた銃で眼の前の少女を殴ろうとする獣人の頭を撃ち抜く。
血が飛び散り、少女の顔にかかる。
少女の方に倒れ込んだ獣人の身体を投げ飛ばし、話しかける。
「おい、、、大丈夫か?」
「―――」
気絶している。
「耳がない、、、羽もない、、、こいつ人間か、、、?」
そういえばさっきの獣人は人間への恨みをこの娘に向けていた。
恐らくこの娘は人間なのだろう。
「どうすっかなぁ、、、ルドガーさん怒るだろうなぁ、、、」
「、、、お腹、すいたぁ」
「ちっ、、、こいつ目ぇ覚めてんじゃねえのか?」
仕方なく少女をおぶり、スラムの奥へ走った。