7話、葵とアティスの街
「あの列の後ろに並べば良いのかな?」
見えた街の入り口には結構な数の並んでる人の姿。
「その様だな」
「んじゃ、列に近くなって来たら降りようっと。流石にスノーに乗ったままはまずそうだし」
って話をしながらのほほーんと近づいてたら、並んでる人たちがあっちこっちバタバタし出した。
おまけに、フルプレートアーマーって言うんだっけ?
鎧を着て槍や剣を持った兵士が10人くらい出て来てこっち見てるてか構えてる。奥の方からまだまだ出てくる。
ヒッポグリフ?グリフォン?まぁどっちか分からんけどそれっぽいのに乗った人達も出てくる。出て来すぎじゃない?
何でかなぁー?って不思議に思ってたら
「あぁ。我はこの世界ではSSランクの魔物だったな」
へぇ。SSランク…………SSランクの魔物!?!?
神の眷属って聖獣とかって言われて人々に崇められて信仰対象とかじゃないの!?!?
「創造神様が伝説があるって言ってたけど、スノーの一族のフェンリルは何やって伝説になったの?ランク高くても魔物扱いってなんかいい事じゃ無さそうだけど……」
「あー、うー、それはだなぁー。あー。」
いつも簡潔に話すのに、マジで何やったのよ。
「スノーさん?教えてくれる?」
ジト目で見てたら視線を感じてなのか、止まってちょっとソワソワしながら呟いた。すっごい小さい声で。
「………を…………して…………達と………された」
「えっ?小声すぎて聞こえない」
「当時の国を3つほど消してこの大陸に残っていた全ての国から集められた勇者とその仲間達と4ヶ月戦い続け討伐された」
「ふぁっ!?ちょっ!えっ!?国を3つも消して勇者達と4ヶ月戦い続けたぁ!?」
何したら国が3つも消されるのよ!?
「うむ。確か国を消した理由は避けて通るのが面倒で通りがけにあった国だったからだ。創造神様に激怒され住処にしていた山に戻って不貞腐れていたところ100万の兵士と1万の冒険者、そして1人の勇者からなる討伐隊が現れて戦い最後は勇者の剣に貫かれて死んだと聞いている」
っ!!そ、そ、そ、そ、そ、
「そ・の・フェンリル!何してくれとんじゃいっ!!」
「それが1500年前の話で、後に小国だった消された国の跡地と生き残りをまとめて勇者が起こした国がこのシグルス王国だ」
………………おーまいがー。
リスタートのはずなのに、すでに詰んでない?
何にもやる前にあの世へってならない?これ。
ワンチャン話せば何とかなる?
建国理由になってそうなフェンリル連れてるのに??
他にも降ろせそうな国あったでしょうよ!
「創造神様の馬鹿野郎ぉ〜……」
うぅぅぅ。あうぅぅぅぅ。
よしっ!ここで悩んでても仕方ない!
逃げてもなんか追ってこられそうだし。
スノーを隠してても多分すぐバレる。私嘘つくのとか誤魔化すの下手だし。
覚悟を決めて行こう!!女は度胸っ!!
「ふぅー!行こうっ!………でもやっぱり怖いぃー!!
まだ死にたくないよー。お母さーん!!」グスン。
なんでスノーはこっちを呆れた目で見てるんだよー。
「まだ死ぬとは決まっておらんだろう。我と主は従魔契約をしているし、我は人語を喋れる。討伐された者は従魔ではなく、人語も喋れぬ奴だ」
「そうだけどー!それだけでどうやって従魔って証明出来んのよー!!」
「種別が多くAランクから分類があるドラゴンが従魔になると人語を喋れる。それは知られているから証明になるはずだ。」
グスッ。なんで最後声小さくなった。
暫くグズってたけど覚悟を決めて、普通の銀の鎧の兵士達とヒッポグリフに乗った青い鎧の兵士達の1番前に立ってる1人だけ黒の鎧の人の兵士のところへ。
もちろんある程度近くなったら、スノーの背中から降りてちゃんと歩いて行ったよ。
降りる時はザワザワして、今は張り詰めた空気が…
あぁぁぁ逃げたい。泣きそうだよー。
「そこで止まれ!」
黒い鎧の兵士さんが声を張り上げたので、スノーと同時にピタッと止まって次の言葉を待つ。またザワザワ。
「君の隣に居るのはフェンリルか!?」
ザワザワをかき消すように張り上げた声で質問して来た。
緊張しすぎて声、裏っ返りそうなんだけど。
「そうです!」
良かった!ちゃんと声出た!!
またザワザワ。からのガチャガチャ。
ガチャガチャってなに!?ってよく見たら、その他大勢の兵士さん達さっきまでより構え方が深くなってない?
重心を落としましたみたいな。まだ泣くな私!
「フェンリルにしては小さいな!まだ子供か!?」
張り上げ声の質問がまた飛んできたけど、どゆ事?
スノーが小さい??子供??
2メートル以上あるし、700歳超えてるよ??
訳わからなさすぎて勢いよくスノーを見たら、ボソッと
「フェンリルの寿命は5000年はある。討伐された奴は3000を超えていた」って。しかも続けて「大きさも10メートル近くなる。そして成体になるのは3000を超えてからだ」って。ススーッと目を逸らしながら。
だからそう言う事は、前もって教えててよっ!!
イラッとしながら
「そうです!」って投げやり気味に返した。
「一緒に居ると言う事は従魔にしたのか!?」
「そうです!」
「従魔になると人語を話すそうだが本当か!?」
!!!この人、人語のこと知ってる人だーっ!!!
「そうです!話せます!」
話せるから!だから私達を捕まえないでー!!
ほんともう限界。泣く。私マジで泣く。
お願いします。お願いします。お願いします。
心の中でだけど必死でお願いしてたら、ずっと質問してた黒い鎧の人がゆっくり近づいて来た。
「近づいては危険です!団長!!」「団長!!」なんて叫ばれまくってるよ。黒い鎧の方団長さんなんですね。
あとちょっとで手が届きそうなくらいまで来て
「君とフェンリルの名前は?」
ちょっと微笑みながら話しかけられて、やり取り中頑張って堪えてた涙が。我慢出来ませんでした。
泣き虫の私にしてはだいぶ頑張ったよ。