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天空のリヴァイアサン  作者: 朧塚
世界樹のエレスブルク
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世界樹のエレスブルク 魔王ベドラムVS魔王リベルタス 1


 イリシュが王女と竜の王と合流するのに、そう時間は掛からなかった。

 何故なら、竜の王の手によって破壊された森の辺りを彷徨っていたら、簡単に二人を見つける事が出来たからだ。


 そして一時間と数十分程して、集落に辿り着く事が出来ただろうか。


 集落の森が燃えていた。

 それはただただ、一方的な虐殺だった。

 不可視の攻撃によって、弓矢や剣、大地の魔法によって抵抗するエルフ達は次々と殺されていった。


 イリシュは横たわる死体を眺めていた。

 顔半分が無くなっている、よく知ったエルフ、リザリーの死体が転がっていた。

 隣では、彼女の幼馴染である男性のエルフが荒く呼吸をしていた。


 現状は最悪だった。

 エルフの長老達は殺され、リザリーも死んだ。ダーシャも虫の息だ。

 じわじわとなぶり殺しにされた者もいたのだろう。


 ベドラムは剣を引き抜き、ロゼッタは魔法の杖を構えていた。

 

 魔王リベルタス。

 その少年の姿とは対比して、何処までも残酷で暴虐の限りを尽くしていた。


「ああ。エルフは少しは残すよ。これからも俺を崇め続ければいい。どうせまた何百年も経てば、長老が生まれる。生存権は保証してあげるさ」

 彼は残酷に笑っていた。

 手にした巨大なガントレットの魔導具によって、エルフを何体も握り潰していた。果実でも潰すように何名ものエルフ達が同時に巨大な鉄の腕によって圧し潰され血が滴り落ちていく。


 ベドラムは巨大な大剣を構えていた。

 彼女は静かに怒りを燃やしているみたいだった。


「イリシュ。確認するが、本当に時間魔導士フリースは死んだのか?」


 イリシュは頷く。

 その瞳には涙が滲んでいた。


「わたしの、わたしの、私の目の前で、眼の前で死んだしんだああああああああっ!」

 イリシュは泣きじゃくる。


「そうか。奴の仇は取ってやる」

 そう言うと、ベドラムはイリシュの頭を優しく撫でた。


「お前の力が必要だ。私が負傷したら、治して欲しい」

 竜の王は、イリシュの肩を叩く。


「ベドラム、私も加勢するわっ!」

 ロゼッタも前に出る。


「駄目だ。お前は足手纏いだ」

 ベドラムは煽るわけでもなく、容赦無く淡々と告げる。


「私も戦えるわよっ! あいつを許せないっ!」

 ロゼッタは叫ぶ。


「頼むから、後ろで待機していてくれ。イリシュを守ってくれ。あいつは私が一体一(サシ)で戦う。それが一番、勝率が高いんだ」


 魔王ベドラムはロゼッタの顔を見ていなかった。

 ただただ、魔王リベルタスだけを見ていた。


「それから。これから沢山、森の命が死ぬだろう。私の魔法でな。エルフ達は存分に私も恨めばいい。私も魔王の一人なのだから」


 森が焼ける。肉の臭いが広がる。リベルタスの嘲り笑いが聞こえた。


「分かったわ。貴方の後ろと、そしてイリシュを守る」

 ロゼッタは頷く。


「頼んだ」


 そう言うと、ベドラムは刃を握り直す。真っ赤なドレスが翻る。


 リベルタスも、ただベドラムだけを見ていた。


 ロゼッタは二人の尋常じゃない魔力量を眺めていた。


 彼らは一人で国一つなど簡単に滅ぼせるだろう。


 それだけの圧倒的な魔力量。


 桁違いの強さを持つ魔族達の長である、魔王の二角。

 その二角が対峙していた。

 魔力の渦によって風が靡いていく。

 ベドラムとリベルタス、二人の髪と服が靡いていく。

 二人は笑っていた。


「私の魔法は『ゴールデン・ブリッジ』と言う。お前は?」

「俺の魔法は『パノプティコン』。君の魔法の概要が分かってきたんだよねー」


 互いが互いを殺したい。

 殺意と敵意が二人の間で膨れ上がっていた。

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― 新着の感想 ―
こんにちは!昨日からの読み合い企画の続きで本日も読ませていただいております!しらつゆです。 現在こちらまで読み終わりました! 次々と仲間が死んでいって、その描写といい生々しい感じが結構きましたね……
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