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ペチュニア  作者: ねもまる
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第一話

第一話

 疲れた。そうか疲れたのか。俺、白金佐倉は専門学校を卒業し、憧れていた東京一人暮らしをはじめ、初めて社会に降り立った。

 出勤は週6、休憩はお昼ご飯食べたら直ぐに終わりで16時間以上勤務してたら疲れるか。その上給料手取り18万。調理師にしてはいい方なのかもしれないが、この現代社会ブラックこの上ないのか?時給換算したらもうちょいくれてもバチは当たらないとおもうんだが。    

 うんダメだ。生きる意味がわからなくなった。

 専門学校に通ってた頃はお金もらいながら料理を学べるなんて何で素晴らしいことだろう、早く仕事したいと思っていた。専門時代では、調理実習では控えめに言っても、技術、調理スピード、その他全ての実力が1番上だったと言う自負がある。

 それがどうだろう。社会に出て有名フレンチレストラン入って自分の実力の無さ、周りに迷惑かけてばっかりで同期のレベルも高く負けたくなかった。だが俺は、サービススタッフでスタートし、同期が調理師としてのレベルを確実に上げている。その間俺は花に水をやり、テーブルクロスを整え、作り笑顔を貼り付けて接客する。もちろんレストランではどの仕事も優劣もなく大切なのは間違いない。

 だが向き不向きは人間であれば必ずある。俺は接客というものがどうも苦手だ。嘘の笑顔の仮面を被り偽物の心で会話するというものがどうしても苦手なのだ。

 当然苦手なものだしやろうとも思っていなかった事だから怒られることも多い。別にそれは構わない。怒ってくれる存在がいることは自分の間違いを発見でき、次の成長に繋がると考えているからだ。

 だけど「もっと楽しそうに接客しろ」「リラックスしてもっと笑顔でやってくれ」、「威圧感をあまり出すな」

 なかなかどうして難しい。というか治し方がわからない。俺の中では最大限の笑顔を貼り付けて接客しているつもりだ。威圧感も出しているつもりはない。

 学生時代から見た目が怖がられて仲良くなれる人が限られていた。そして俺はその限られた奴らが俺の中身を見て仲良くしてくれているだろうと思いそれに満足していた。

 きっとそれが原因なのだろうな。

 なぜ怖がられるかを考えず仲良くしてくれてた奴らに甘えていたのだ。

 そして何故この仕事をしているのか、何故調理していないのか、この店に俺は必要ないのではないかと考え始めてしまった。

 自分が何をしたくてここにいるのか。そいつがだんだんぼやけていき、生き甲斐というものがわからなくった。

 そして俺は家に引きこもった。

 仕事も行けなくなった。

 おかしいな。食欲が全く湧かない。睡眠もろくに取れない。最後に熟睡したのはいつだっけ。風呂も入らないとここ何日も入れてない。というかご飯って最後いつ食べた?

 頭の中にうつ病という言葉が浮かんできた。

 自分とは程遠い言葉だと思っていたが、ネットでうつ病を調べてみた。簡単なテストができるらしい。アンケートに答え、その点数でうつ病かわかるものだった。

 結果は重度のうつ病と書いてあり、病院に行った方がいいと書いてあった。

 〈うわ、まじか〉

 不安が頭をいっぱいにする。

 誰に相談すればいいのか。

 というか相談するものなのか?相談の仕方ってどう切り出せばいいんだ。

 相談できたとして、相談された側に迷惑かけるだけだよな。

 応援してくれた人にも申し訳ないな。

 様々な不安が一気に頭の中で爆発しそうになって、一人で抱え込んだ。

 でもそれは爆発した。

 高校時代からずっと仲のいい友達達と、専門時代に仲良かった奴らに電話で打ち明けた。

「いきなりごめんな。俺うつ病になっちまったかもしれない」

「えっまじ?大丈夫?」

 大丈夫って聞かれたら大丈夫としか答え用がない。

「うん」

「なんかあったらいつでも言って!」

 みんな決まってこの台詞を吐いた。打ち合わせたのかと思えるくらいに。

 まあいきなりうつ病と言われても何を言っていいのかわからないのだろう。のうのうと生きてる大学生には経験がないだろうし当たり前だ。

 〈性格悪いな、俺〉

 形だけは心配してくれたがやはりうつ病の友達なんかめんどくさいのだろう。それ以降はたまに生きてるかの確認だけの連絡が来た。打ち明けなければ良かった。こんな物は偽善だ。何を期待して俺は打ち明けたのだろうと後悔だけが苦く残った。

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