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桜ちゃんは嘘が得意!

作者: 白夜いくと

「ぱぱきらーい!」


 娘の桜に『エイプリルフール』を教えたのは私だ。桜はちゃんと理解したのか、前日「ぱぱにいおう!」と意気込んでいた。


 今日は4月1日。

 それを知ってか、私の夫が娘を抱き上げる。そうしたら娘はもう一度、


「ぱぱきらーい!」


 と言った。

 夫は床にあるペットボトルやゴミ袋などを足蹴りにして、部屋中、娘を連れて歩き回る。この男。たいそう機嫌が良さそうだ。全く、こういう時だけは……。


 私はテレビ横のデジタル時計を指さして桜に向かってこう言った。


「桜。今何時?」

「いちじはん!」


 それがどうしたのかと夫が訊いてきたから、桜と一緒に言ってやった。


「エイプリルフールの嘘は午前までよ! パパきらーい!」

「ぱぱきらーい!」


 そう言うと、夫は少し悲しそうな顔をして、蹴り上げたペットボトルを拾ってゴミ袋に詰めていた。ばーか。最初からそうすればいいのに。


 夫は仕事をクビになってから、家で籠りがちになっていた。家事も育児も私に任せていることに対する罪悪感のようなものはあるんだなって思う。

 なら、立ち上がるチャンスを与えよう!


「桜。一生懸命なパパは?」

「すきー」


「――――!」


 夫の目が輝いた。オマケに、


「そ、掃除機でもかけようか?」


 なんて嬉しそうに言いながら、押入れをガサゴソ漁る。段に頭をぶつけながら。失敗の多い夫だけど、私が別れを持ち出さないのはこの瞳があるからなのよね……。


 私も好きよ。頑張ってね、パパ!

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