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第九十五話 赤の惨禍
狙いはリラの胸当ての帯。スィンの鈎爪が切断し弾け飛ぶ。
「く!」
「へ! 殺してしまう前に綺麗なお肌でも拝ましてもらうかね?」
「下品な!」
余波で切り裂かれた服から覗かせる白い肌を左手で押さえた。
「そんなこと気にしながら俺との戦いが続けられるか?」
スィンは今までと劣らぬ速度で両の鈎爪を繰り出し、リラは明らかに精彩を欠いたまま後ずさりながら受けていた。
「もう後がねえぞ?」
リラは背中に当たるものを感じた。確認するまでもない樹の幹だ。
「終わりだ」
スィンは再びリラの胸を貫きにいく。
リラが素早く腰を落とすと鈎爪は幹に突き刺さった。
「終わったのは貴様だ」
空いたスィンの懐にレイピアを突き出したが、目の前に迫って来るのは、スィンのもう片方の鈎爪。
身をよじって顔を傷つけられるのはさけたが、代わりに右の肩を貫かれ、そのまま樹に張り付けられる恰好となった。