第九十話 絶望
「は、はい……」
ゆっくりと舌を出したアレックスはそのまま処刑人の靴に顔を近づけた。
「よく見よ! 皆の衆! クレイスの王子様が一平民の靴をお舐めになるぞ!」
どっと笑いが起こるが、アレックスは意にも介さない。ただ助かりたい、その一心で靴をなめ回した。
瞬間、歯が折れるかと思うほどの衝撃があった。口中に鉄の味が広がる。
「下手くそめ。かえって俺の靴が汚れたじゃないか」
処刑人はゲラゲラ笑いながら、床に転がる芋を拾った。
「口が痛そうだな。薬を塗ってやるよ!」
痛みで悶えているアレックスの顎を掴み上げて無理矢理口を広げると芋をそのまま突っ込んだ。
突然の衝撃にアレックスはむせ返り芋を噴き出す。
「あーん? 王族様は庶民の食べ物が口に合わないってか? じゃぁ下の口だとどうかな?」
(下の口?)
疑問に答えがかえってくる間もなく、ズボンを刀で切り裂かれ下半身が露わになった。
「お、なんだくせえな? こいつ、おもらししてやがる! ちょーでちゅかー。おうじちゃんは、まだおねしょしゅるんよねー」
嘲りも観客の嘲笑も耳に入ることなくぼやけた視界で何も考えることは出来なかった。
「そんなお子ちゃまにはお仕置きだ!」
今度はキュウリを拾い。アレックスの肛門に無理矢理突き入れ、蹴りを入れて奥まで押し込んだ。
「がは!」
裂けた肉から血が垂れ落ち、痛みに転がり回った。