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第八十九話 願望
「おい、生きているか?」 処刑執行人が大股開きで、ヌルヌルする床を歩みアレックスの元に着いた。
髪をわしづかみにすると同時、嫌悪感を表情から隠すことなくあらわにして唾を吐きかける。
アレックスのまぶたがピクリと痙攣するが、その瞳は虚ろで焦点は処刑執行人には合っていなかった。
「結構結構。この程度で死んでもらっちゃ困るからな」
「も……」
アレックスの口から息とも言葉ともつかぬ空気が漏れる。
「なんだ?」
「もう、殺してくれ……」「おいおい。最後まで希望は捨てたらいけないぜ。もっと俺達を楽しませてくれよ。もっと喚けよ。命乞いしろよ」
アレックスから返事はない。それにムッとした表情を見せて、顔を靴で踏み付けた。
「靴の裏を舐めろよ。上手に出来たら処刑を取やめても良いぜ」
アレックスの瞳に微かな光が灯った。