第七十五話 侵入
土の民の洞窟を抜けると、想像した以上の明かりが目に飛び込んできた。
「白い……この光は……」
冷たい風が身をこおばらせる。
「雪……ウィードはもう冬なのか?」
出口がバックボーン山脈の頂上付近とはいえ、辺りはすでに白銀に覆われていた。
太陽光がいつもより眩しく輝き、溶けかけた雪が雫となって木々の枝葉から滴り落ちていた。
「ち、こんな事態じゃなければ、この光景も美しいと感じることができたかもしれないのによ」
スィンが毒づきながら辺りを見回す。
「この雪は、俺達にいろいろ教えてくれる。アレックスを誘拐したのは5人て、ところか……アレックスがどのように連れ去られたのか……暴れた感じがしねえから、抱え上げられたか」
「クルラがいなくなった時を見計らっていることからして、アレックスを確実に狙って実行しているな」
「そう考えるとマーナーがウィードに何らかの手段を使って伝えたと見ることが正しいだろう」
「この道程を提案したのもあの女だからな」
「足跡を先行して追っているクルラは何か見つけただろうか?」
雪の積もった下り坂は下りるにも慎重にならざるを得ず、クルラが追いつくことを期待した。
が、空に赤い点が見えた。
「だめ、そこにある砦で足跡は消えているわ」
「3人で砦に侵入は無理だな……」
「まぁ、こんな辺境の砦で何らかの裁定が下りるとは思えない。おそらく首都まで運ばれるだろう」
「その時に奪還だな」