第六十八話 勝負
一日遅れとなり申し訳ありませんでした。
土の民の洞穴の中、勝負を行う祭壇では熱気がこもっていた。
「へへ、やるじゃねえか」
「お前さんもな」
勝負の行方は一進一退。片方が当てれば、もう片方が当て返して、勝負はいまだに互角の互いに5個ずつ。
「このままじゃ、決着がつかないんじゃないか?」
「スィン様が実力を発揮するのは残り1個になってからではありませんでしたか?」
「そ、そうはいっても……、やはり不安だ」
「右4つじゃ!」
「しまった。裏をかこうと思ったが……」
スィンが右手を開くとそこには4つの宝石が輝いていた。
「ほっほう。こりゃ一気に有利になったのう」
「残り1つになった。ここからスィンは実力を発揮するのか?」
「畜生、9つもあったんじゃ当てるのも難しいな……」
スィンはそうつぶやきながら長の顔を見る。目元はニヤニヤしているが白ひげで表情が読みにくい。
「定石から行けば、4・5だな……だが、ここでそんな単純なことをして、せっかく有利な状態を放棄するだろうか? もう一度裏をかいて、1・8? そんな冒険するか?」
スィンはわざと相手に聞こえるようにつぶやくが、それでも表情が変わる気配はない。
「ふ、そうかい? 意外と土の民ってのは憶病なのかね?」
長にやや怒りのこもって眉がつりあがる。
「そうかいそうかい、3・6辺りで被害がすくなるようにしたか。では右6!」
「ワシらをバカにしおってからに、覚悟せい!」
開かれた長の右手には4つの宝石が輝いていた。
「ち、やはり9通りもあると難しいな」
「ほほほ、次で決まりじゃな」
スィンは台の上に置かれた一個の宝石を、両手で交差するようにしてどちらの手で取ったかわからないようにした。
「ふむ、そんな取り方をしたか、じゃが、ワシの目はごまかせん! 右手が下にあるから取りやすかったのは右手。だからと言って素直に右と答えるようなまねはせんぞ」
じっと長はスィンの目を見つめる。目に輝きは失われていない。
ワシの経験からすると、右手で取って素早く左の掌に移した、といったところかのう?」
スィンの目がかすかに開く。
「ふ、じゃが、此処までの勝負でワシも相当の実力者であることはばれておるじゃろう。そんなありきたりのことをすると見せかけてしなかった。ゆえに右じゃ!」
「そこまで裏をかくとは思わなかったぜ」
スィンがゆっくりと右手を開いた。
来年もよろしくお願いします。
良いお年を