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七人の追跡者  作者: 柊椿
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第六十六話 土の民

「まぁ、グラーリー山を登っているが、何も山頂まで行く必要はないからな」

「え、そうなの?」

 スネイプの言葉にアレックスは驚きを隠せなかった。

「この山の中腹にある峡谷に土の民が住んでいる。彼らは山肌に洞を掘って生活しているからな。その洞は向こう、つまりウィード側につながっている。通してくれればいいが……」

「確かに険しいかもしれないが、通してくれなければ山頂を越えていけばいいんじゃないか?」

 アレックスが疑問を素直に口にする。

「駄目ですわ。グラーリー山の頂上には嵐の神が住む。決して足を踏み入れてはならぬ聖域ですわ」

「へぇ、よく知っているじゃないかマーナー。その通りだ、未だかつてブランタン島の有史以来誰一人としてグラーリー山の頂上にたどり着いたものはいない。嵐の神……そいつが何者かは分からないが……おそらく俺達のようなものがおいそれと登り始めてたどり着けるような環境じゃないんだろ」

「そ、そんなところに近づいていいのかい」

「まぁ、具体的に、嵐の神より土の民の方が粗暴だっていう意味では近づいてはいけないんだろうな」

「す、すねいぷ。いますぐひきかえそう」

「声がひっくり返っているぜ。まぁ、心配するな。話して分からぬ連中じゃないだろう」



「駄目じゃ」

「あらら、取り付く島もありませんわね」

 日が落ちる前にたどり着いた中腹部、両脇に岩肌が迫る峡谷=土の民の集落=巨大な洞穴の前で出会った土の民はこちらから口を開く前に即答した。

 身長は高いものでようやく1mを超えるか、というくらい。それでいて横には幅があるが、それは太っているというよりも筋肉質ゆえに。若い者もいるのかもしれないが、皆一様に白いひげを長く蓄えた男たち。土の民に女はいないのかと聞けば、そんなことはなくただ表に出てこないだけである。

「まぁ、そんなこと言わずに話だけでも聞いてくれないか?」

「草の民どもの言うことなぞ、分かっておる。我々が作った装飾品か武器が欲しいと言ったところじゃろ?」

「いや、違うね。ウィード領まで通してほしい」

 スネイプの言葉でさざ波が流れるように集まり始めた土の民たちががやがやと喚き始めた。

「なんと傲岸不遜な!」

「われらのすみかに土足で!」

「何が目的だ!」

「おそらくは我々のものを盗み出そうとしているに違いない!」

「おそろしやおそろしや~」

 土の民たち地震で作り出した壁がスネイプ達に差し迫る。

「やばいな、これほどまで話を聞かない連中だったとは!」

「ええい! 静まれ静まれ!」

 スネイプのつぶやきが、土の民の怒号に掻き消えそうなことに比してスィンの一喝はグラーリー峡谷にこだました。

「ここにおわすお方をどなたと心得る!」

「す、スィン! まさか僕の身分を……?」

 スィンは仰々しく樽をぽんぽんと叩くいて続けた。

「天下の逸品、ブラン村1228年物なるぞ!」

「は、はは~」

 土の民は行儀よく整列して土下座するともろ手を挙げてひれ伏した。

「ま、まさかこのワインはこのために?」

「俺達の掛け金は、このワイン。そっちは俺達を通すこと。勝負はナンゴで良いか?」

「な、此処に来て賭博する気か? スィン!」


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