第六十四話 情報収集
「アレックスは騙されたんじゃないか? ここ数カ月、いやさ戦争が始まって以来、出入りは俺達だけだぜ」
スネイプはみんなが聞いてきた情報を総合して、そう判断した。
「ブラン村にある、と言っただけだから隠れているとかは?」
「アレックスは村社会を甘く見ている。ウィードとは国境、土の民の住むグラーリー峡谷のふもと、常に外敵から危険にさらされているような村においてよそ者が入ってきているのに気付かない、というのは村の存続にかかわるんだ。
だからこそ俺達は夜間入村できなかったし、自警団という組織もしっかりしているんだ」
「しかし、ウィードはここを攻めてない」
「ここは土の民のすみかに近すぎる。彼らを刺激したくないんだろう。彼らは森の民と違って鉱石などを生み出すから仲よくしておいた方が利点が大きい」
「なるほど……じゃぁ、印璽はどこに?」
「森の民が間違えたか……さっさと首都ガーゼル城に入っていると見るのが常道だろう」
「それじゃぁ、早速行こう。グラーリー峡谷を越えて行くんだよね」
「簡単に言ってくれるねぇ。土の民の縄張りを行くっていうのはそう簡単にはいかないんだぜ?」
スィンが荷車に樽を載せてみんなのところへ戻ってきた。
「これから山越えしようって言うのに、そんな重たいもの持ち運ぶわけ?」
クルラがあきれたように溜息をついた。
「当り前よ。さぁこんな村に長居は無用だ。日が暮れる前にさっさと行くぜ?」
「あ、ああ……」
スィンの勢いに引っ張られるように他の者たちも歩を進めた。
「待ってろよ、ヘルマン。今すぐお前を殺した奴をそっちに連れていくからな……」
スィンの荷車を押す腕に脈が浮かんできた。