第六十一話 闇と影
11日の更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした
逃げる女を追う忍び。月明かりが黒い雲に隠れた。人では見えぬ道を駆け抜ける。
村から離れた田園地帯で、二人は立ち止った。
「ここら辺にするかね」
マーナーが振り向き、忍びと相対する。
「オンナ、ナニガ……モクテキダ?」
これは質問ではない。答えを得ようが得まいが、結果は一つだと右手に持つ白刃が伝えていた。
「いやだね、私が彼に何かをしようと企んでいるとでも思っているのかい? 私は落ちこんでいる彼を慰めようとしただけさ」
「ヤミ……フゼイガ……ザレゴトヲ」
突然強まった風が実る麦の穂を波打たせながら二人の体を吹き抜けて行った。
マーナーの銀色の髪が風にもてあそばれ、その下に隠れた褐色のとがった耳が露わになった。
「気づいていたのかい。まぁ、だからどうしたって感じだけどね。勘違いしてもらっては困るけど、私はゴレアスステップで彼らの道案内を買って出て以来の協力者なんだよ」
細く切れ長の瞳が忍びを見下すようにして吐き捨てた。
風は一瞬だけだったのか、雲を払うと月は輝きを取り戻し、風は穏やかなに麦穂を揺らしていた。
「だいたいあんたも私と似たようなもんじゃないかい」
「サニアラズ。ワレハカゲ、ナンジハヤミ」
言葉を遮るように忍びは強く言い放つが、却ってマーナーはため息をつくように苦笑いをした。
「やはり、似たようなものじゃないか」
「カゲハ、ヒカリノソバデ、ハベルモノ……。ヤミハ、ヒカリニ、アイタイスルモノ」
再び風が強まる。
「オンナ、ツギニ、ヒカリヲオオワントスルナラ……」
左腕が弧を描いた。
と、同時、マーナーは首をひょいっと横にかしげると、その横を刃が通り過ぎていき、忍びの姿は消えうせていた。
「今のは警告かい? やれやれ、チョイっとつまみ食いしようと思っただけなんだけどねえ」
マーナーもまた闇に溶けて行った。