第五十七話 嵐のあと
結論から言うとシュバインバルトのはずれでの戦いはクレイスの勝利と言える。
百騎の騎兵は壊滅し、残りは撤退。こう着状態の南街道を避けてクレイス領内に一気に侵入する作戦も失敗に終わったことからすると、戦術的にも戦略的にもすべての人がそう判断するだろう。
「ヘルマン……。ウソだろ? 国じゃおっかさんが子供産んで待っているんだぜ?」
ウィード軍が撤退していった道には騎兵たちの死体が残っているのは当然にしても、その中には到底信じられないものが転がっていた。
「俺達の勝負もまだ決着がついてないんだぜ? 勝手に一人で先に行くなよ」
スィンは転がっていたヘルマンの首を抱きかかえると、胴体に無理やり重ねた。
「気合と根性でくっつけろよ! お前ならそれくらいできるだろ!」
どれほどスィンが叫んでもヘルマンから返事はなかった。
「王子サマよ。あんたの判断がこのような結果を招いた。その現実から目をそらしたらいけないぜ」
スネイプがアレックスの肩に手を載せて耳元で囁いた。
「僕の判断が、ヘルマンを……?」
「そうだ! お前がヘルマンを殺したんだ! どうするんだ! 戦わなくてもいい戦をしかけて!」
スィンの叫び声が森の中にこだました。
「それから、クルラが報告したいことがあるそうだ」
「え? クルラが?」
「一騎、森の中に侵入して、追いかけたんだけど……間に合わなくて……」
アレックスに大きな胸騒ぎした。ヘルマンの死以上に強い不安。
「間に合わなくて……どうなったんだ!」