第四十話 森の空中戦
スィンは不利を承知していた。
樹の枝から枝へと飛び渡りながら戦うことは地の利は森の娘にあり。
また一度飛んでしまえば動きを変えることができない。これは弓を持つ側からすれば格好の的である。
それでも……
「同じ土俵で勝たなければ、勝ったとは言えないんだよ!」
スィンはまっすぐに娘の元へと飛びかかる。
「愚かな。何か策があるのかと思えば……」
当然のように何も迷い無く娘は矢を放つ。
「策なんざねえよ! クレイス歩兵には前進あるのみ!」
目の前に飛んでくる矢を左のかぎ爪ではじき飛ばし、右のかぎ爪で娘に斬りかかった。
「先ほどのことといい、目だけは良いようだな」
振り下ろされた刃をこともなげに横に躱すと、そのままスィンは地面に向かって落下していった。
「草の民の言う土俵とやらは外に出たら負けであったよな?」
娘の口の端が吊り上がる、と同時足下が揺らいだ。
「な?!」
「そうさ、俺が狙ったのはテメエじゃねえ! 枝だ!」
落下していったはずのスィンは下の枝に捕まり、その反動で落ちてくる娘に向かって飛び上がっていた。
「お仕置きだ!」
スィンは娘とのすれ違いざまにかぎ爪を数度にわたって斬りつけた。
「……! あれ? 痛くない……はずした、のか?」
「へ、俺は狙った獲物ははずさねえよ」
「え? きゃあぁぁぁ!」
娘が下の枝にたどり着いた時、その服がはらりと外れて、肌が露わになり、その場にしゃがみ込んでしまった。
「へん、乳も尻も足りてねぇ女をいたぶる趣味はねえから、これくらいで勘弁してやるよ」
「嘘だ……いたぶる趣味はなくても辱める趣味はあるんだ。だからスィンにとってはこれくらい、じゃないんだ。これが狙いなんだ。そうなんだろ! ヘルマン!」
ヘルマンは頬をかきながら明後日の方向を見た。