幕間
「草の民は忠実な下僕が欲しくなった。今までは犬を飼っていたが、より働くように手を加えた、即ちだな……。獣の民と呼ばれる連中だ」
スネイプの質問に答えることができたスィンは得意げに腕組みをする。対照的にクルラは歯がみしながらスィンを睨み付けた。
「う~。スィンは絶対に分からないと思ったのに~!」
「へへん。聞いてないようでもきちんと聞いているのさ。残念だったな。クルラ」
スィンとクルラのやりとりを横目にスネイプはシスターメリーに問いかける。
「闇の民について歴史の授業では習いましたが、社会の授業では全く登場せず、俺達の生活に関わっているようには思えません。どういうことなのですか? 実在するのでしょうか?」
「中々鋭いわね。では、復習から。草の民と土の民の関わり合いはなんだったかしら?」
スィンが目の色を変えて2人の間に割ってはいる。
「はいはい! 俺知ってる知ってる! 交易をやっているんだろ? 土の民は手先が器用だから武器や道具、宝石にいたるまで作っている。草の民はそれらを農作物等と交換しているんだ」
「今日のスィンはどうしたことか冴えているわね。きっと雪が降るわ」
「シスター。雪ならもう降っている」
クルラが窓の外を眺めながら呟いた。
「道理で冷えこむと思ったわ」
シスターは暖炉に追加の薪をくべながら、次の問を投げかける。
「それでは草の民と森の民の関わり合いは?」
「あれ? なんだったっけな?」
今度はスィンも頭を抱え込んだ。クルラもお手上げとばかりに窓の外をジッと眺めている。
「原則無い。森の民はシュバインバルトの奥深くに籠もって出てこないから我々との関わりは無い。たまに気まぐれな者が人里にやってきて町に居着いたりするらしいが……」
「あ~。シーラ兄さんみたいな奴か。月に一度の買い出しでバルサザルの町に出た時に見かけるよな」
「そうね。彼はあの町で教師をやっているの。彼を見たら分かるように森の民は尖った耳と華奢な体つきをしているからすぐに分かるわ。それじゃぁ、空の民とは?」
「はいはーい! 私のことだもん。すぐ分かるわ。森の民と同じく、関わりはほとんど無い。それどころか住むところ追いやったのよね。森の民には手出ししないくせに。スィンみたいに卑怯な奴が多いのよ」
「おい、誰が卑怯だ。誰が。俺はクルラに卑怯なことはしてないぜ。草の民だ、空の民だ何て区別無く。俺達は仲が良いよな」
「それで、先生闇の民とは?」
「おい、無視するなよ」
「闇の民は文字通り闇に隠れて生きているの。光に当たることなく、ひっそりと人目に触れることなく……そう、今もこの雪山のどこかにもいるのかもしれないわ……」
「もう滅んだんじゃねーの?」
「森の民の中で闇に染まれば闇の民となる。だとしたら、森の民がいる限り、闇の民は滅びることはない」
「そんな影に隠れて何をしているんだろうな?」