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七人の追跡者  作者: 柊椿
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第三十四話 出口

「ゴレアスステップの出口ビレーダーの町か……随分と寂しいところだな」

 物々しい警備兵が行き交う城壁の中に入ると、目抜き通りには砂埃が舞うだけで歩く人々もおらず、また建ち並ぶ店で扉を開けているところは一つもない。

「戦争が始まる前は活気がありましたわ。それこそ毎日がお祭りかのように人々で溢れ、良い商品を誰かに先を越されてしまうかといけないから早く手に入れなければと熱気に満ち、あちらこちらで競りのかけ声が飛び交っていたものですわ。こうなってしまったのは戦争で物流が途絶えたから……」

 一匹の野良犬が尻尾を振りながら一行に駆け寄ってきた。砂にまみれ、あばらが浮き出た痩せ犬は野生の闘争本能を失い、ただ強き者に媚び従う者の姿だった。

「お腹がすいているんだな。ほれ、食えよ」

 スィンが一片の肉片を差し出すと野良犬は目に光りを宿しそれに食らいついた。

「今、こっそりとサンドワームの肉を処分したでしょ」

「ボクハ ヤセタアワレナイヌヲ ミスゴスコトガ デキナカッタ ドウブツアイゴシャ デスヨ」

「じゃぁ、スィンの食事は全てあの犬にあげることにするわ」

「ごめんなさい。僕の分もください」

「べーラングの街と違って、手に入るものはなさそうだ。休息を取ったらすぐさま出発だな。マーナ-とはここでお別れか」

 スネイプの言葉に皆がマーナーに注目する。

「あら、つれないこと。ここまで共に歩んできたというのに用が済んだらサヨナラですか?」

「そうだ。これから先、無関係なものを巻き込むわけにはいかない。あんただって、この街に用があったのだろ?」

「この街に用があったのではなく、ゴレアスステップを越えたかっただけですわ。ここから先は、そうですわね……。気ままな旅を続けるのも良いですけどあなた方についていくのも楽しそうですわね」

「楽しいとかで済まされる問題じゃな……」

「良いじゃないか。スネイプ。ここから先の地理にも詳しそうだから道案内を続けて貰ったら」

「アレックス。そんなことで良いのか? 一般人を巻き込むなど」

「良い。僕が決めたことだ。それとも僕の言うことが聞けないのか?」

 今までアレックスが見せたことのない気迫にスネイプだけでなく他の者達も気圧されて何も言えなくなった。

「分かった。アレックスがそういうならそれに従おう。だが、何かあっても自己責任だ? 良いな?」

「ええ、かまいませんわ。元々気ままな一人旅、途中で何があっても覚悟の上で続けていたものですわ」

「それじゃぁ、この辺りに詳しいという君に聞こう。どういう道筋でいったらいいか」

「あら、目的地も教えてもらえずには決められませんわ」

 辺りの空気が凍り付く。スィンもヘルマンも動きはしないがいつでも動ける体勢を取る。

「それは……」

 スネイプが言いよどんでいると、アレックスが口を挟んだ。

「ウィードの首都ガーゼルだ」

「アレックス!」

「良い。仲間と決めたなら隠し事は無しだ」

「あらあら、戦争相手国の本拠地にたった数名で挑むなんて……これは同行を願ったのは失敗だったかしら」

「そうだと思うぜ……。だがここで降りるというなら、向かう先は他でもない……」

 スネイプが銃口を向ける。ヘルマンもスィンもクルラも得物を抜き放つ。

「あらあら、怖いこと……。心配しなくても、これくらいで怖じ気づくことはありませんわ。おそらく国のために危険を冒して旅をされているのでしょう? それくらい察しがついていましたわ。それならば私にも国のためにできることをする。それだけですわ」

「ほう、立派な心がけだ。それで俺の質問には?」

「これから先はウィードとクレイスの小競り合いが続いているところが多いですわ。それを避けるには……先ずシュバインバルト、そしてグラーリー峡谷でバックボーン山脈を越えてウィード領内へ。あとは首都ガーゼルへは一本道ですわ」

「くっくっくっ。面白いねぇ。森の民、土の民の縄張りを通っていくとは」

「そうでしょう? とてもステキな旅になると思いますわ」



来週は5分大祭で練習作品を投稿するためお休みいたします


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