幕間
街から離れた山間部の冬は雪が降り積もり、夜になると寒さが一層厳しい。
暖炉で薪のはぜる音が冷たい空気を切り裂く。
「おい、スネイプ知っているか? 昔よっつのたみってのに分かれたんだってよ」
子供達は昼間元気に走り回っていたはずなのに、夜は夜でおしゃべりに余念がない。
「もちろんだ。この前シスターメリーから習っただろ」
「え……? そうだったっけ……」
「シスターの話を聞いていないのか? 昔人々は争いが絶えなかった。そこで神様が怒ってすみかを四つに分けた。即ち、俺達人間である草の民、ドワーフと呼ばれる土の民、エルフと呼ばれる森の民……そしてクルラのような空の民だ」
「な、なんだよ。それくらい俺にだって言えるよ! 自分ばっかり何でも知っているみたいな顔するなよ!」
「へぇ。それじゃぁ。さらに二つの民が現れたのは知っているか?」
「なんだって? え、ええと……」
「ちょっと、スィン! あなたまたクルラをいじめたのね?」
薪が暖炉の中でがたんと言う音を立てて崩れる。
「シ、シスターメリー……」
スィンが振り返るとそこには仁王立ちする法衣をまとった女性の姿とその背後でしがみつく小さなクルラの姿があった。
「い、いじめじゃないですよ。シスター」
「スィンがまたぶった」
「クルラちゃんはこう言っているけど?」
「ぶってなんかいないですよ! ちょっと当たっただけですよ」
「痛かったもん! スィンはぶった!」
「ぶってないよ!」
「う~。ぶってないって言い張るのね……それじゃぁさっきスネイプが言ってたことを答えられたら許して上げる!」
クルラが笑みを浮かべる一方、スィンは汗が止まらない。
「スネイプが言っていたこと……」
「二つの民の話だな」
「あらスィン君。この前授業で教えたはずだけど覚えていないのかしら?」
「シ、シスターまで……ちょっと待ってよ……」
スィンは腕組みして頭をかしげるが、ふったところで答えは出てこない。
「答えられなかったら、ぶったことを認めてちゃんと謝ってよ」
「だから待てって言っているだろ! 今思い出しているんだから」
「幾ら考えたって授業を聞いてないんだから思い出せるわけ無いじゃない!」
「バカにするなよ……ええと確かだな。そう、森の民だ」
スィンの言葉に他の三人が息を呑む。
「森の民は純粋だから光に触れていれば光に染まるが、闇に触れて闇に染まった者達が現れた。そう、即ち闇の民・ダークエルフと呼ばれる者達だ」
「へ、へぇ、凄いじゃない……だけどもう一つは分からないでしょ?」
「だからバカにするなって……草の民は忠実な下僕が欲しくなった。今までは犬を飼っていたが、より働くように手を加えた、即ちだな……」
今度はスィンが笑みを浮かべる番。対照的にクルラは目を丸くして息を呑んだ。