第百二十二話 逆転の逆転
マーナーのシャムシールがのどをかき切った、アレックスが、そう思った瞬間、甲高い音が森中に鳴り響いた。
スィンの足元には槍が転がる。アレックスは元持ち主として、それをすぐに認識する。そして、スィンの手元には両手で握られた、ヘルマンの刀。
そしてマーナーのシャムシールは……?
アレックスがそう疑問に思った瞬間、風を切る音が頭上から聞こえて、とっさに後ずさった。
先ほど自分がいた位置に、鋭い刃が回転しながら、落ちてきて地面に突き刺さったのを認めると、もしよけなかった時のことを想像して、血の気を失うのを感じた。
「スィン! 危ないじゃないか!」
アレックスは、この出来事の責任をスィンに求めた。
「わりい、わりい。別に狙ったわけじゃねえんだけどよ。まぁ狙っていたら、うまくはじけることができたかどうか」
「剣槍流、だなんて、勇ましい言葉ははったりだったの?」
今度はスィンから刀の切っ先を喉元に突きつけられて、マーナーはあきれたように肩をすくめた。
「ああ、本当に剣と槍を同時に振り回せないこともねえがな、槍をおとりにして、さっさと放棄する。油断したところを両手持ちの刀で、一発逆転、ってわけさ」
「じゃぁ、どうして私を倒してしまわないわけ?」
「そこまで、できるほどお前さんは未熟じゃねえってことさ。このままのど元を突き刺してしまえば、どうなるか。奥の手をもう一つ持っているんだろ?」
「一つだと思っているんだとしたら、あなたの負けよ」
「そりゃ失礼……」
スィンはくっくっと笑みを浮かべながら、刀を前に突き出した。