121/127
第百十七話 危機
乾いた金属音が山中にこだました。
「な! 折れ……た?」
スィンは鈎爪にかかっていた力が突然失われた勢いで体勢を崩すと同時に、目の前に現れた白刃を避けるため無理矢理体をねじった。
「今ので仕留められなかったのは残念だけど……!」 マーナーの第二撃がスィンの胸元に迫る。
「ち!」
残った左手の鈎爪でかろうじて弾くと後ろへと飛びのいた。
「スィン様の英雄譚とやらも、ここでおしまいかしらねぇ」
「ここからが始まりなんだよ!」
スィンは叫ぶと同時鈎爪を突き出した。
耳を切り裂くような高い風切り音の後、鈎爪はスィンの手を離れて宙を舞った。