第百八話 真実
「いいえ、最初からそばにいた、と言った方が正解かしら」
「それはいったいどういうことなんだ?」
アレックスの体はまだあちこちが痛む。そのため意識がそちらに向かっていて、クルラの言っていることがなんだかさっぱり分からない。
「よう、女狐。よくもまぁ、堂々と再び俺達のそばに現れたもんだな」
スネイプが銃で自分の肩をたたきながらマーナーに向かって言い放った。
「あらあら。踊り子なんて商売をやっていると、当然裏の仕事もあるから、女狐なんてののしりは慣れているけど……、随分とお冠のようね」
「まぁ、怒っていると言えば怒っている。だが、あんたに対してじゃない。事ここに至るまで気づかなかった己の愚かさに怒っているのさ」
「あら、随分と殊勝なことね」
「どういうことだ? スネイプ」
スィンが話についていけず、横から質問をぶつけた。
「早くに気づいていれば、こんなところまで旅する必要はなかった。そして、ヘルマンも死ぬことはなかった。そういうことだ」
「なんでそうなるのかが分からねえ。だが、ヘルマンが死んだ原因にマーナーが関わっているってことなのか?」
スィンの口調に怒気が含まれてくる。
「関わっているどころじゃない。マーナーがヘルマンを殺した……張本人さ」
「な、なんだってー!!」