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第百七話 覚醒
「え?」
突然の質問にアレックスはぽかんとした表情となった。
「もう一度聞きます。あなたはだぁれ?」
「僕は……。」
回想する。直近の出来事……。敵国にとらえられ、辱めの上、処刑されそうになった。
これではとても王子だ! なんて言いきれない。
「あなたの全てがあそこにあるわけ? ここまでたどり着いたあなたは何者?」
クルラのささやき声が耳から脳の奥に届く。
「でも、それはスネイプやスィン達の力があったから……」
「あったから何? 確かになかったらたどり着けなかったかもしれない。でも、あってもたどり着けない人もいるものよ」
「だから、王子として胸を張れ、とでも言いたいのか?」
「クレイスは既に敗戦濃厚になっているわ。国民は逆転の旗印を求めているのよ」
「旗印になれというのか?」
「敵国に潜入し、拷問にも耐え抜いてかつ印璽を取り返してきた英雄……。たとえ、スネイプ達の力があってのこととはいえ、あなたという指導者がいて初めてなしえたこと。国民はそう評価するものよ」
「でも、印璽は……」
「近くまで来ているの……」
「え?」