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第百六話 目覚め
「あら? お目覚め?」
アレックスはゆっくりとまぶたを開くと視界に入ったクルラの姿に何度も瞬いた。
「天使? そうか、僕は天国に……」
「何変なこと言ってるのよ? どっちかというと小悪魔の私を天使とか」
クルラはベシッとアレックスの頭をはたいた。
「いたっ! もっと怪我人をいたわってよ」
「ほっほう〜。そこまで手当してあげた私に礼もなく口答えですか。なんなら怪我を増やしてさしあげましょうか?」
「い、いや遠慮しておくよ……。それよりもここは?」
「あなたが捕われたときから私達が拠点にしていた小屋よ。土の民の坑道の出口から程近いところよ」
「捕われた……。やはりあれは夢じゃないのか」
「ええ、あなたは捕われ、ウィードの人々の前で辱めを受け、処刑執行直前に助け出されたのよ」
「……」
アレックスは思いだしくない事実を突き付けられうなだれるしかなかった。
「それでも生きている……。あなたは、だぁれ?」