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第百五話 熱狂
広場に鬱積した不満は、新たに見つけた代わりのはけ口に向かって奔流した。
だが、流れとはいつか去っていくもの。
日が傾くころには、人影がまばらになっていく。
「う、臭いのう」
後片付けを任された老人が鼻をつまむ。
彼は普段から広場の掃除をすることで日々の糧を得ていたが、この日は途方にくれていた。
あちこちに散らばった野菜屑くずをかき集めるだけでも相当な量だ。これに加えて見物客の礼儀のなさ、食べこぼし飲み残しがあちこちに放置され放題。
老人は見上げて天を呪った。処刑台から振り子のようにぶら下がっているものが視界に入る。
「それは放置で良いぞ、7日間晒せ、との御達示だ」
警備にあたっていた兵士が指示を出す。
が、老人にとっては真っ先に片付けたのだ。
すでに糞尿が垂れ流されている。ここから腐った肉や体液が地面を汚すと思うと耐えられなかった。