第百三話 まく
「スネイプ! このままじゃ、あいつら合流地点までついてくるぜ」
「どこかで撒かないとな……」
2人は森の中を駆け抜けつつ、後ろの追っ手との距離が開かないことを確認した。
「お前の射撃でどうにかならないのか?」
「こんなところで俺の居場所をばらしたくはないな」
「ち、その間に俺は横にぴょい~っと抜けようと思ったのによ」
「幼馴染を犠牲にしてまで助かりたいか?」
「へ、お前ならいざとなったやるだろ」
「まぁ、そうだけどな。今がそうかもしれないぜ」
「冗談。お互い、相方が欠けたらこの危機は脱せられねえぜ」
「ごもっとも……。だがどうやって切り抜けるか」
「お任せを……」
「この声は……」
「こんの女狐!」
2人は聞き覚えのある声……。途中で無理やり追跡行に加わり、土壇場で裏切った女の声を忘れることはなかった。
「今は……、いいえ以前から私はあなた方のお味方ですわ」
「戯れ言を! 姿を現せ! つばを吐きかけてやる!」
スィンが声の主に向かって罵声を浴びせた。
「私のことより、まずはウィード兵でしょう」
指をパチンならす音が聞こえると、どうしたことか兵士たちは一斉に横に向かって走り出し、あっという間に遠くへ走り去った。
「何をした? いや、その前に姿を見せろ」
「言われずとも出ていきますわ」
立ち止った2人の前に、木の蔭からローブに身をまとったマーナーが妖艶な笑みを浮かべて出てきた。