105/127
第百一話 告白
ウィードの北のはずれにあるとある村。
戦争とは無縁と思われたこの地にも黒い影が忍び寄ってきていた。
「おら、ついに兵隊さんになることになっただ」
「んな、あほな! あんたみたいなどんくさい男が兵隊さんになれるわけねぇべ」
「そんなこと言ったって、実際に召集令状が来てるだ」
「あんたみたいな、どんくさいの……、兵隊さんにはむかね……。むかねったら、むかね……ぐす」
「お、おら、おら……、無事、帰ってこれたら……、結婚してくれられれろ」
「言えてへん……。こんなときくらいしっかりしてくれろ」
「すまん……」
「あんたみたいなどんくさいの、他に面倒見れるのはおらん。任せとき」
「お、おら絶対生きて帰るだ!」
「百一話だからって、変な話で間を取るんじゃねえよ!」
スィンは王子を救出後、見張り小屋から抜け出す途中に発見され、追跡してくるウィードの歩兵たちから身を隠しながら森の中を突っ切っていた。
「スネイプの奴は無事か?」
「スィンに心配されるほど、落ちぶれちゃいねえよ」
木々の間を猿のように飛び回りながら、王子を救った射手はつぶやいた。