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第九十六話 果たせぬ仇
「へへ。なかなか良い格好だぜ」
「く、何たること。殺すなら一思いにやれ! これ以上の生かしておくことは侮辱だ」
流れていく血とともに遠のいていく意識を保ちながらリラは吐き捨てるように言った。
「そうだな。生かしておいても、あんたは復讐にやってくるだろう。どんな気分だ?殺したい男が2人もいるってのは?」
問い掛けに、リラは唾をスィンの顔に吐きかけた。 血が混じって鉄の臭いがする。
「それが答えか。まぁでも気にするな。このスィン様の英雄物語の1頁にきざまれるんだからよ。心配せずに死ね」
「そこまで言うなら世界に知らぬものはいないほどの英雄になるんだな」
リラの言葉が終わると同時。スィンの鈎爪がリラの喉を貫いた。