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[はじめに]
この小説は拙作「妖精眼のパンドラ」の番外編です。
時間軸は作中年から七十年程前の、〈魔力世界〉という世界で起きた二度目の大戦の話となっています。
本編を読んでいなくてもネタバレなどの問題はありませんが、下記の登場人物紹介や用語解説を一読していただければより読みやすくなると思います。
[登場人物]
“蛇目”テオドール・ギフト
世界最強と悪名高い魔法使い。人間が神の手元を離れた時代に生まれたとされ、紀元前から存在しているといわれている。本編「妖精眼のパンドラ」の主人公、竹中崇の師匠。
二度目の伝播大戦を起こした世間に呆れはしていたが、国とは互いに干渉しないことを条件に不参戦を決め込んでいた。しかし弟子が徴兵された事実を知り、その報復として第三神国の殲滅に乗り出す。
“灰銃”ダライアス・グレイズ
グレートブリテン大妖王国 女王直属討伐軍少将。通称【討伐隊】の第二師団、人狼狩りの長である軍人。竹中崇の同僚ウォルフ・グレイズの父親で、グレイズ家の当主。
将校でありながら討伐隊を率い前線で戦っていたが呼び戻され、最重要任務を言い渡される。女王に対し敬意を示さないテオドールに悪印象を抱くが、女王直々の命令を遂行するため業腹だがテオドールと共闘することになる。
“黄金の獣” “新たなるヴォーダン”
アドルフ・ゴットフリート・ヴォーダン・ハイドリヒ
第三神国総統。北欧の最高神であるオーディンの旅路を完遂し、「神」を意味する『A』のルーンを得た超越者。呼び名に相応しい金髪の美丈夫で、〈魔力世界〉でもかなり歳若い人物だがドイツ帝国から政権を奪い取り、瞬く間に民衆を支配した類まれなる求心力の持ち主。
[用語解説]
魔力世界
現実世界、通称〈現世〉と隣り合う世界。魔法や魔術が常識のもので、ドラゴンや吸血鬼などの生き物が当然に存在している。
第三神国、またはナチス・ドイツ
ある日突然全世界に宣戦布告し第二次魔力世界伝播大戦を引き起こした。現世の第二次世界大戦と同様ドイツ・イタリア・日本の三国で同盟を組み、「枢軸国」を名乗る。
目的は他宗教を粛清し、『神代』を再創することだと渙発している。
神代
神話や宗教の「神」が住む場所。神は神代を拡げることで支配領域を増やし、時には他神代と争うこともあった。神代が滅びるということはその神話や宗教が終わりを迎えるということである。
第三神国が復活を目論むゲルマン・北欧神代は終末を迎え、滅びていながら人々の記憶に長く残っている珍しい神代である。