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7話

つきました、いつもお世話になってるスーパーです。


「さてなっちゃん今日何食べたい?せっかく来てもらったし好きなもの作るよ」


「え?いいんですか?」


「もちろん。むしろ俺の作る料理で申し訳ないけどね。外食しようにも姉ちゃんも仕事人間で仕事中は連絡しても無駄だし帰ってくるの遅いから前もって言ってないとダメなんだよねぇ」


我が家の女性陣は自由の民すぎる。あと仕事好きすぎ。なんでそんな働きたいのか俺にはまったく理解できない。


「いえ、そんなことないです。むしろ蒼太の作るご飯がいいです」


「お、おう。そうか、ならいいんだけど。んでなんか食べたいのある?」


「蒼太が作るものならなんでもいいです」


困るやつぅ。こうゆう時は希望を言ってくれた方が助かるんだけどな。

買い物カゴを手に取り、ならばと質問を変えてみた。


「じゃあなんか苦手なもんとかある?」


「パクチーは人間の食べ物じゃないと思ってるくらいですかね」


それはわかる。俺もパクチー嫌い。

前に会社の飲み会でパクチーサラダとかいうものが出てきたときは戦慄した。

だってサラダじゃなかったものあれ。ただのパクチーの山だったよ。


「それに関しては激しく同意。けど困ったな。何作ろう」


「本当になんでもいいんですけど…じゃあなにか和食をお願いしてもいいですか?」


「ん、和食か。そういや5年カナダにいたんだもんな。和食を食べる機会も少ないか」


「いえ、和食は意外と食べれました。自炊すればいいですし今海外にも和食屋さんは増えてますから」


たしかにたまにテレビで紹介されてたり特集されてたりしたな。


「けど日本人がやっているお店ならいいんですけど現地の人が始めたお店だとこれじゃないよなぁって感じが否めませんでしたね」


「あー、そうなんだ。日本にあるイタリアンとか中華が日本人向けに調整されてるのと同じ感じなのかね」


「かもしれません。なので蒼太の作る和食にとっても期待します」


言葉通り期待した目でこちらを見ていた。

なっちゃんって表情変わらんのになんでそんなにわかりやすんだろうか。目は口程にってやつだろうか。


「あんまりハードルを上げんでくださいな。んじゃ適当に食材見ながらメニュー考えるからなっちゃんは自分の日用品とか買っててよ」


「わかりました」


俺はとりあえずは野菜売り場に、なっちゃんは日用品を売っている棚の方にそれぞれ別れた。


「さーて期待されたからには頑張って胃袋つかんだろうかね」


うちに残っている食材を思い出しつつ野菜を吟味する。和食といえばやはり煮物だろうか。

正直日本に住んでると何が和食で何が洋食なのかわからなくなる。

アレンジレシピとかのおかげでその辺の境界があいまいになっている感じ。


クック板先生とかにはいつもお世話になっております。


「ここは胃袋を掴む定番料理、肉じゃがにしますか」


家にジャガイモあるし他の野菜と肉を買い足すだけでできるだろう。

煮込みに時間がかかるけどそこは圧力鍋さんに頑張ってもらうことにしよう。


「肉じゃがですか」


「うお!?」


後ろからなっちゃんが手元をのぞいてきた。

普通にびっくりしたわ。美人が手元に現れてみろ。いやでも心拍数上がるわ。


「いいですね。久しく食べてません」


表情は相変わらず変わっていないが嬉しそうな雰囲気は伝わってくる。


「そうか。んじゃ肉じゃがでけってーい。なっちゃん肉は牛肉?豚肉?」


「牛で」


キリッとした表情で即答してきた。そうだよね、牛おいしいもんね。ちょっと高いけど。

せっかく再会した子のためにおっさん奮発しちゃる。


「はいはい。んじゃ牛はあとで買うとして、野菜を適当に買い足しますかねー」


人参やらネギやら自宅の冷蔵庫に入ってない野菜をカゴに放り込む。


「結構適当に買うんですね」


「んー確かにあんまり気にしたことはないかも。ちょっとは確認するけどね」


話しながら玉ねぎを放り込もうとした。


「そっちよりこっちに売ってるもがいいと思いますよ。個別売りですけど1玉が大きいですし、鮮度も良さそうです」


なっちゃんから待ったがかかりました。なるほど、目利きができるとな。


「んじゃそうしよう。これは我が家に新戦力が来たかな」


「なんのことですか。単純においしそうなものを選んだだけですよ」


「世の中それすらできない人もいるってことっす」


姉ちゃんとか母さんとかな。買い物頼むとろくなもん買ってこないんだあの人たちは。


「そうなんですね。せっかくならおいしいもの食べた方がいいと思いますけど」


「だよねー。俺もそう思うよほんと。切実に」


腐りかけ持ってきたときにはどうすればいいのかと本気で頭を抱えた。解決策は思いつかなかったため頼むことをやめることにした。


「ところで戻ってくるの早かったけど必要なものは揃ったの?」


「はい、元々そんなに多くないですし会計も済ませてきました」


「はや。日用品くらい一緒に買ったのに」


「それはまだ少し恥ずかしいので遠慮します」


ほんのりと頬を赤らめて断られてしまった。まぁ俺みたいなおっさん入門してるやつに買われるのも抵抗があるんだろうな。


「さいですか。じゃあ今日の夕飯に必要なもんは選んだし、あとは弁当用の冷食買って帰ろうか」


「お弁当もつくるんですか」


「うん、俺と姉ちゃんの分ね。外食ばっかだと栄養偏るしお金もかかるしね」


「主夫みたいですね」


「その呼び方はやめてくれ!」


結婚どころか彼女すらいないんだ。せめて結婚してからにしてくれ。


「いい旦那さんになると思いますよ?」


ちょっと照れながら褒めてくれた。表情は変わってないけど照れているのはわかる。もしかしたら俺はエスパーかもしれない。


「じゃあそんな俺にかわいい奥さんをください」


「はい」


はいってなんだよ。


「なっちゃんは美人だからねー旦那選び放題だろうな」


ほんと美人もそうだけどイケメンも羨ましいわ。人間見た目じゃないって言っても結局は見た目から入るんだから有利であることには変わりない。

無い物をねだっても仕方ないことはわかっているが羨んでしまうのも仕方ないと思う。

自分で考えて凹んでしまう前にさっさと会計して帰って肉とじゃがを煮込んだるわ。


「もう選んでますけどね」


レジに向かって歩き出した俺からちょっと離れた位置にいたなっちゃんの声は今回、俺には届かなかった。

次回姉ちゃんでます

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