3話
「まぁ私が小学校に上がる前ですから…」
小学生に上がる前?幼稚園時代ってことか?
今年大学に入学するならば今18歳だろう。となると15年くらい前か?
「よく遊んでもらってました」
さらに彼女の話を聞いてみた。
どうやら彼女は俺が今の家を建てる前に住んでいたマンションの隣に住んでいたらしい。
当時はまだ両親は離婚していなかったが父は父で母に負けじと必死に働いていたためう両親がほぼ不在だった。
そのため隣に住んでいた立花家にお世話になっていたらしい。
そこまで聞いて思い出した。
「あぁ!なっちゃんか!うわまじか超久しぶりじゃんか」
すっかり忘れていた。あの頃は確かに自分の家にいた時間の方が短かった。
そうかあそこ立花さんちだったのか。苗字を気にしたことがなかったから立花って聞いてもピンとこなかったんだな。
「そうかぁ、懐かしいなぁ。なっちゃんももう大学生かぁ」
時が流れるのも早いものだ。小さかったなっちゃんが大学生になったのか。
昔を懐かしんでいると向かいに座る立花さんことなっちゃんの空気がちょっと変わっていることに気がついた。
「やっと思い出しましたね」
これがジト目というやつだろうか。半眼になったなっちゃんに睨まれている。
「ごめんごめん。けどさすがに今のなっちゃんと当時のなっちゃんはさすがに結びつかんて」
なんてったってめっちゃ美人なのだ。
俺にこんな美人の知り合いなんぞいないしまさかなっちゃんだとは思わない。
それに話を聞くまで忘れていたくらいだ。一目で気付けという方が無理だ。
慌てて弁明するとジト目から解放されちょっと呆れたような表情になった。
「まぁ私も覚えてもらってるとは思っていませんでしたよ。まぁ今の話で私があなたのお母さんの話を受け入れた理由はわかってもらえました?」
「いやそれはそれだよ。わからんて。知らん男ではないだろうけど20年近く会ってない男なんて知らん男同然だろ」
旧知であったとしても俺となっちゃんがよく遊んでいたのは20年近く前だ。
確か当時俺が小学2年とかそんなんだった気がする。幼稚園時代の年上の友達なんて覚えてないだろう普通。
「そうかもしれませんけど奏さんもいますし」
「あー、まぁそうかもしれないけどさぁ」
そう、この家にはもう1人住人がいる。1歳年上の俺の姉である奏だ。
今は仕事に行っていて不在だが。
「というより今断られても困っちゃいます。荷物とかもう送ってしまいましたし」
「なるほど…」
たしかに宿なしの女の子を放り出すのは鬼畜の所業か。
しかも美人だし。変な男に絡まれたりしても大変だろう。
「まぁそれもそうだよなぁ。わかったよ。とりあえずはうちにいるといいよ」
「なんか不服そうなのが気になりますけどよろしくお願いします」
そう言ってなっちゃんは頭を下げた。
違うんだよ、不服ってことじゃないんだよと言いたいがうまく説明できる自信もなかったためこちらこそよろしくと俺も頭を下げておいた。