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王太子妃になります!

お越しいただきありがとうございます。

最終話になります。


カクヨムさんで改訂版初公開中です。

https://kakuyomu.jp/works/16816410413988087435

 戻ってきた『紫苑の宮』の周りでは近衛騎士が慌ただしく動いていた。私たちは各々空いている部屋で休息をとることになったが、王太子殿下やフレデリック様は先ほど到着した後続の部隊と共に皇城に向かっていった。

 夜が明けようとしていた。


「マリー。眠れませんの?」


 とても疲れている筈なのに色々なことがあり過ぎて頭ばかりが冴えていた。

 ソフィーが起きていたら少しぐらい話せないかと思ったのだ。


「何だか寝付けなくて。お邪魔だったかな」

「いいえ、構いませんわ。私もですもの」


 ソフィーが自分が掛けている向かい側のソファーを勧めてくれた。


「アーサー殿下は…………」


 アーサー殿下の容態が気になっていた。森で怪我をしたのかもしれない。でも誰も何があったのか教えてくれなかった。


「一騎打ちですわ」

「えっ?」

「船の上でお話ししましたでしょ。アーサー殿下とラインハルト王太子殿下が一騎打ちをしたのですわ」

「そうなの!?」

「えぇ、男性の意地というものですわ」


 ソフィーは立ち上がると私の前に跪き私の手を握った。


「大丈夫ですわ。アーサー殿下はきっと素晴らしい為政者になりますわ」

「へっ?」


 そろそろ私たちも休んだ方が良さそうですわと微笑むソフィーに見送られて私は部屋に戻った。

 窓から見た空は上り始めた太陽に照らされて紫色に変わろうとしていた。



 何とか短い睡眠をとった私が身支度を終える頃、部屋をノックしたのはコンラート会長だった。


「おはようございます。と言っても既に昼を回ってますけどね」


 コンラート会長の顔には酷い隈が浮かんでいた。


「おはようございます? コンラート会長はお休みになられたのですか?」

「あぁ。兄上が一緒だったのが災いしました……」

「それは…………お気の毒に。何かお手伝いできることはありますか?」

「いえいえ、我々には早く帰国するようにとの指示が出たのですよ。という訳でお迎えに上がったのです」


 先に扉を出たコンラート会長は振り返るとにっこり微笑んだ。


「さぁ、帰りましょうか」





 ファティマ国のウェルペン港が見えてきた。

 何だか涙が溢れてきた。

 隣に立っていたソフィーが涙を拭いてくれる。


「戻って来られましたわね」


 帰国の船に乗ったのは、私とソフィー、それにランスロット様とコンラート会長だった。もちろん警護には近衛騎士が当たってくれた。


「そう言えばランスロット様はお休みになれたのですか?」

「そりゃー、ぐっすりとな」

「流石ランスロット様、頼もしいですわ」


 ソフィーに言われて真っ赤になったランスロット様がそれを誤魔化すように話をした。


「そう言えば、見物だったぞ」

「何が?」

「王太子殿下とアーサー殿下だよ。二人とも顔が青紫になってた。ありゃー、相当派手にやり合ったな」

「ランスロット様。そういうお話はしないで差し上げるのが紳士というものですわ」

「すっ、すまない」


 ソフィーに窘められたランスロット様が気まずそうな顔をしている。

 どんなことをしたら青紫になるのか想像したくもないが、二人とも元気ならよかった。

 船のタラップが下ろされ、漸くファティマ国の地を踏みしめた。


 ただいま、ファティマ国。








 

 初夏の日差しが樹々の緑を一層輝かせている。私は朝から支度に追われていた。

 ケイトが髪を丁寧に編み込んでアップにしてくれている。


 あの宣戦布告から3年の月日が経っていた。

 ネーデルラン皇国は私たちが帰国後間もなく降伏した。

 皇帝陛下が退位され、当面の間アーサー殿下が統治することになった。長らくネーデルラン皇国で過ごされたアーサー殿下はネーデルラン国民に絶大な人気を誇っている。

 そう言えばあの時ソフィーが言っていた。


『きっと素晴らしい為政者になられますわ』


 確かにアーサー殿下は新しいネーデルラン皇国の導き手となっていらっしゃる。

 

 クリストファー皇太子殿下は皇帝陛下の手によって残念ながら命を落とされた。ラインハルト王太子殿下が皇城に行った時には既に亡くなられていたそうだ。親子の間に何があったのかは分からない。

 皇帝陛下が蟄居されるに伴い、ヘティ様が付き添いを申し出られたそうだ。ネーデルラン皇国に行く機会があれば是非またお会いしたい。

 ファティマ国に編入されていたマクシミリアン様だが、実は皇位継承権をお持ちだそうでアーサー殿下について国の政務に携わっている。もしかしたら行く行くは新ネーデルラン皇国の皇帝になるのかもしれない。

 ランスロット様は念願の王宮魔術師になられた。もちろん私とソフィーも試験を受けたということだけは言っておきたいと思う。結果については秘密だ。

 騎士になるものと思われていたコンラート会長は何故か文官の道を進んでいらっしゃる。きっとフレデリック様にこき使われるのが嫌だったに違いない。


 そしてソフィーは…………王立学園の卒業と同時に、何とヴィンセントお兄様と結婚した。まさかソフィーをお義姉様と呼ぶ日が来るとは思いもしなかった。



 皆それぞれの道を進んでいる。

 ソフィーはそのままでいいと言ってくれたけれど、これからの自分を思うと不安でいっぱいだった。


 パタパタパタ

 

 聞きなれた羽音ではあるが、今日は流石にどうかと思う。


「ちょっと、ライ。まだ支度中なのよ」

「分かってるよ」

「じゃ何で来たのよ」

「何でだと思う?」

「私が聞いてるのよ!」


 ライがお腹をよじって笑っている。何がそんなにおかしいのか。


「ほんとマリーとヴィーは反応が一緒だな」

「は?」


 ライの姿が忽然と消えると、その後には白い正装に身を包んだラインハルト王太子殿下が立っていた。

 王太子殿下は私に手を差し出した。

 私はそっとその手に自分の手を重ねた。


「さっ、行こう。教皇様がお待ちかねだぞ」


 大聖堂の鐘が王都に響き渡っている。

 

 これから私はラインハルト王太子殿下と結婚式を挙げる。

 本日、マリアンヌ・ストランドは王太子妃になります!

ついに最終話となりました。

お付き合いいただきました皆様、ありがとうございました。

そしてアーサー様ファンの皆様すみません。

ifストーリー次話として投稿しております。

こちらで許して下さい。


山のような誤字・脱字にも関わらず、

ご報告いただきました皆様、ありがとうございました。


そしてブックマーク・評価を下さった皆様、ありがとうございました。

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